独特な文化が数多く残る鹿児島県徳之島。ここで行われている「漁なくさみ」とは一体どのようなものでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
徳之島の「漁なくさみ」
鹿児島県徳之島にある徳之島町の手々集落。ここで先月、伝統的なイベントである「漁なくさみ(ぎゅうなくさみ)」が復活し、ニュースになりました。
先月18日に行われた漁なくさみでは、集落の子どもから高齢者まで約30人が参加し、大小約60匹の魚が捕獲されたそうです。同集落では、かつて夏になると漁なくさみを実施していましたが、約15年前から集落単位では開催していませんでした。
今回の復活は、子どもたちに伝統漁法を体験させ、集落活性化につなげようという意図のもと、企画されたといいます。(『「漁なくさみ」を復活 児童も海の恵み体感 徳之島町手々』南波日日新聞 2021.7.20)
漁なくさみとはなにか
徳之島では、サトウキビや米の収穫が終わり農閑期になると、各集落で農家の人々が集まり、闘牛を見たり、踊りを楽しんだりして疲れを癒すという習わしがありました。
「なくさみ」の語源は”慰める”であり、例えば徳之島で有名な闘牛は「牛なくさみ」唄会は「唄なくさみ」と呼ばれます。そのなかで、魚をとって食べる会が「漁なくさみ」です。
上記の手々集落で行われたものは、漁のタイプとしては「追い込み漁」になります。参加者は一列になって竹の棒で海面をたたき「わっしょい、わっしょい」と声を上げながら、約200m先に仕掛けた網へ魚を追い込みました。
どんな魚が捕れるのか
漁なくさみでは、集落総出で漁を行うのが普通です。追い込み漁の場合は浅場に生息する魚が漁獲対象となります。
代表的な漁獲物としては、ボラやダツといった南方系の浅場の魚たちや、オヤビッチャなどスズメダイの仲間が多いようです。また当地ではアバサ、アバシャと呼ばれて食用にされるハリセンボンなども穫れるといいます。
獲れた魚はすぐに調理され、参加した人みんなで食べます。最近は観光イベントとしても親しまれているそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>