最近しばしば話題になっている「代替食品」。大豆で作られた代替肉が有名ですが、魚介類を模したものももちろんあります。
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魚を使わない「海鮮丼」?
オリンピック開催などで来日する外国人に対応するため、注目される「プラントベース」の食材。これは野菜などの植物性食材を用いて作られる食品のことで、宗教や主義を問わず多くの人が口にできることが利点です。
いくつかの競技が行われる東京都台東区。その区役所内の食堂ではいま、さまざまなプラントベース料理が提供されています。
その中にはなんと「海鮮食材」を模したプラントベース料理もあります。ぱっと見はイカ・サケ・イクラがのった海鮮丼なのですが、イカはナタデココ、サケは大豆製品、イクラは昆布から作られており、かける醤油も含め一切の動物性食材が使われていないそうです。(『植物由来 広がる「代替シーフード」』日テレNEWS24 2021.6.28)
なぜ魚介類がプラントベース食品に?
多くのプラントベース食品は、肉の代替食品として開発されてきた経緯があります。宗教的菜食主義者や、畜産の地球環境への悪影響を懸念する人々によって支持されてきました。しかし最近はそれに加え、魚介類の代替プラントベース食品も目立ってきているようです。
魚介類は近年「肉よりも健康に良い」と尊ばれるようになってきた一方、乱獲による資源量減少や養殖の環境への悪影響を指摘する声も増えており、いわゆる「サスティナブル」な食品とは呼べないところもあります。
そのため世界ではすでに、魚介の代替となるプラントベース食品が盛んに開発されるようになってきています。アメリカでは大豆で作るツナが一般的に流通しているほか、デンマークではイクラ同様に海藻から作られた「キャビア」もあるそうです。
精進料理は「プラントベース魚介類」
しかし振り返ると我が国でも、魚介類の代替となる「プラントベース食品」が数多く存在してきました。仏教の修行の一環や法事の際に食される「精進料理」にそのようなものがたくさんあります。
有名な例として、こんにゃくから造る「山くじら」、レタスの仲間の茎を加工した「山クラゲ」、しいたけを貝に見立てた「山アワビ」といったものがあります。
いずれも残念ながらそこまで本物に似ているとは思いませんが、しかしひとつの料理としては非常に完成度が高く、その理念とともに長く伝え継がれるべきものだと思われます。
東京オリンピックをきっかけに、このような古くからの日本の知恵に再びスポットが当たるようになるかもしれませんね。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>