「星」が付いているサカナたち 季節限定の『追星』は繁殖と関係あり

「星」が付いているサカナたち 季節限定の『追星』は繁殖と関係あり

七夕も近づくこの時期、雨上がりの夜空には美しい星が輝きますが、水中にも「星」がつくものたちがいっぱいいます。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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水族館で「天の川」がテーマの展示

岐阜県各務原市にある、世界最大級の規模を誇る淡水魚専門水族館「アクア・トトぎふ」。ここで7月7日の七夕を前に、天の川を表現したテーマ水槽が設置され、話題を呼んでいます。

水槽内には、七夕に欠かせない笹や短冊の装飾とともに、星をイメージした2種類の魚が泳いでいます。

「星」が付いているサカナたち 季節限定の『追星』は繁殖と関係あり天の川をイメージした魚が泳ぐ(提供:PhotoAC)

ひとつは、黒い体に白いドット模様が特徴的な淡水エイ「ポルカドットスティングレイ」。白い模様の一つ一つを、暗い夜空に広がる白い星に見立てています。そしてもうひとつは、目の上の青い輝きが美しい小魚「アフリカンランプアイ」。群れを成して泳ぎ、スポットライトの光の反射で青く輝くその姿は、まるで水中の天の川のようです。

担当者はこの展示について「願い事を思い浮かべながら見てほしい」と語っています。(『岩水中の天の川に 輝く星が泳ぎます』アクア・トトぎふ ニュースリリース 2021.6.15)

名前に「星」のつく魚たち

我が国では、体表に点状の模様がある魚に「ホシ〇〇」という和名をつけることは一般的です。いまや超のつく高級魚として知られるホシガレイも、ヒレに黒い粒上の模様があることからその名がつけられました。

「星」が付いているサカナたち 季節限定の『追星』は繁殖と関係ありホシガレイ(提供:PhotoAC)

ただしこれは厳密な命名ルールというわけではなく、点状模様があってもホシではなく「イッテン」「コクテン」などの名付けをされることもあり、命名者次第という側面があります。また海外においてはこのような模様を持つ魚に対し「ドット」「スポット」という名付けをすることが一般的で、星を表す「スター」が名に付くことはあまりないようです。

ちなみに英語でスターフィッシュといえば魚ではなく「ヒトデ」のこと。もちろん点の有無ではなく、その形状から名付けられています。ヒトデの仲間では、日本にも「ホシヒトデ」というものがいるのですが、彼らも点状模様も持たないので、そのシルエットから和名が付けられたのかもしれません。

繁殖期にだけつく「星」とは

さて、魚の中には、一年の中のとある時期だけ「星」をまとうようなものもいます。その星とは点状模様ではなく、繁殖期のオスの個体に見られる「追星」という突起状の組織です。

この追星は、オイカワやフナなどのコイ科淡水魚に現れることが知られています。魚における二次性徴のひとつで、性ホルモンの作用によって頭部の皮膚や鱗の一部が突起状に固くなるのです。

「星」が付いているサカナたち 季節限定の『追星』は繁殖と関係あり追星の出ているオイカワ(提供:PhotoAC)

この追星は装飾物ではなく、メスを刺激したり、オス同士で争うときに用いられます。オイカワやニゴイの大型個体では追星も迫力があり、婚姻色と相まって同種のメスとは全く別の魚のようにも見えます。

コイ科の魚を捕獲したとき、もしそれが繁殖期のオスの個体だったら、よく観察してみてください。その荒々しさやかっこよさに惹かれるかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>