一昨年の台風19号は、埼玉県の名栗川にも大きな傷跡を残した。昨年も川は濁り、ヤマメの魚信は遠のいたが、今年は釣行のたびに姿を見ている。ここでは今季の5回の釣行を紹介する。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター小島満也)
名栗川への台風の影響
一昨年10月の台風19号は、埼玉県飯能市の名栗川にも甚大な被害をおよぼした。ヤマメの棲息が危惧されるほどの濁流。川は翌年も濁り続け、ヤマメの魚信は遠のいた。今年は元気な姿を見せてくれるのか。
3月解禁から計5回、ほぼ毎週のように通った名栗川の探釣の記録を一挙公開する。
名栗川とは
埼玉県西部の飯能市が最上流部の一級河川。荒川の支流。流程は約63kmで、荒川支流群の中では最長を誇る。
正式名称は入間川だが、古くからの市民は名栗地区から源を発するので、名栗川の俗称で呼ぶ。イワナ、ヤマメが生息するのは山間の名栗地区。
春には渓畔にサクラが咲き競い、夏ともなればアユの友釣りや都会からの家族連れなど川遊び客で賑わう、長閑な山里の川を令和元年10月、狩野川台風に匹敵する台風19号が襲来した。
台風被害
台風19号は埼玉県下を強風域に巻き込んだが、被害を拡大させたのは長時間に及んだ滝のような雨。
市域には大雨特別警報が発令され、降り始めからの総雨量は上名栗地区(沢口)の観測所で644mmを記録した。
スギ・ヒノキが植林された名栗地区の山々は激しい雨で地表が崩れた。土砂は大量の水とともに名栗川へ流れ込んで、土手を削り、渕という渕を埋めた。濁流で膨れ上がった川は茶色の帯になった。
台風の影響は翌年にも
台風の影響は翌年にも及んだ。一向に解消されない濁り。深場がなくなり、平坦化した本流。多くの釣り人がその光景に落胆した。管轄する入間漁協もポイントが消失した渓流区域へのヤマメ放流を断念。当然のように、釣り人は敬遠した。
この年、名栗地区で筆者が毛バリで釣り上げたヤマメは、前年の10分の1のわずか5匹。「名栗川はもう何年も回復しないだろう」。誰しもがそう思っていた。