伊藤さとしのプライムフィッシング。テーマは「早春のチョウチンセット」。今回は竿の長さ(タナ)について考えてみよう。
(アイキャッチ画像提供:週刊へらニュース伊藤さとし)
春は活性が不安定
春に三日の晴れなし。つまりは天候が安定しないということだが、大きな流れからすれば気温・水温ともに上昇傾向であることは間違いない。
「ヘラブナは変温動物だから、水温の変化に呼応して体温を調節する。水温が低ければ、体温を下げる。つまりは筋肉を動かさないのだから、エサも食べる必要がない。逆に水温が上がると、体温も上げる。体温を上げる要素は筋肉運動であり、その元となるのはエネルギーなのだから必然的にエサも食べるようになる」
まるで図鑑のような解説ですね(笑)。ごもっともだとは思いますが、それを釣りとどう結び付ければいいのですか?
「三日の晴れなしと同じだよ。要は魚の活性が安定しない、つまり釣り方やエサが絞りきれないということでしょう」
でも基本的には、真冬よりは活性が高いわけですよね?
「そうだね。でもそれがイコール釣果に結び付くかと言えば、じつはそうでもない。食いが渋いなら渋いなりに活性が安定していれば、釣り方などが絞れるけど、春はそう簡単じゃない。ゆえに春なのに、真冬よりも釣果が劣る現象が生じたりする」
活性に呼応させる
たしかに、それはありますね。そこで登場するのが、チョウチンセットだと?
「まあものすごく効果的というわけではないけど、早春にはこの釣り方の特徴を生かしやすいよね」
具体的には?
「活性が低ければ抜き系バラケ、高めなら持たせ系、中途半端な活性ならそれなりの持たせ方と言うように、要はバラケの使い方次第で活性に呼応できるところが強みなんだ」
でもそれって浅ダナのセットでも可能では?
「可能だけども難しい。とくに持たせ系のバラケで誘いを多用しないとアタってこないような釣況では、チョウチンのほうがはるかに竿の操作が簡単だからね」
なるほど。つまりは操作性ですね?
「それと春は意外なほどに、風が強まることも多いよね。しかも冬と違って、風向きが安定しない。そうなるとますますチョウチンのメリットがいきてくるからね」
でもチョウチンだと、竿の長さの選択がキモになりますよね。むしろ浅ダナのほうが、その点の迷いが少ないのでは?
「それはたしかにある。実釣でもそうだったけど10.5尺竿ではアタリが出ず、12尺竿に替えた途端に動くようになった。そのことからも1~2尺の違いが世界観を変えることは多いよね」
竿交換の基準
でも操作性はいいけど竿(タナ)の選択が難しいだけでは、説得力に欠けます。何か竿選択でのいいアドバイスはありませんか?
「まずは釣果表などの情報だよね。何か基準をつくらないと先には進めないから、まずはその長さでやってみてからの判断になるだろうね」
それでウキが動けばいいですが、動かない場合はどうすれば?
「30分か長くても1時間を目安にしての竿交換だろうね。厳寒期は水温が上がり始めてからじゃないと判断が難しいけど、春はそこまで低水温ではない。ゆえに答えも早く返ってくるだろうしね」
その際は1~2尺差での竿交換ですか?
「そういうやり方もあるし、一気に竿(タナ)を替えてしまう方法もある。または水深を大きく変えてしまう、つまりポイント移動だよね。真冬に浅場の選択肢はほぼないけど、春はそれが十分あり得る。たとえば水深5mラインの深宙ではアタらず、8尺竿でも上向いてこない。そうなると魚が浅場に移動してしまったかもしれないから、たとえば水深3m前後のポイントで竿8尺のチョウチンをやってみるとかね」
水深3mですか……。
「そういうことがあり得るのが、春の釣りの怖さでもあるんだけどね」
次回も「早春のチョウチンセット」です。
<週刊へらニュース伊藤さとし/TSURINEWS編>