「コマセの撒き過ぎ」でアジの活性を下げることがあるのだろうか。なお、今回は「LTアジでイワシミンチをコマセとしているとき限定」の話としてお読み頂きたい。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・古谷健太)
魚に満腹中枢はあるのか
以前読んだ文献で、「魚には満腹中枢はない」という記載を見たことがある。ネットで検索して頂ければ、同様の内容の記事はたくさん出てくる。
しかし、熱帯魚を飼育していた経験のある私としては疑問がある。なぜなら、エサを与えた熱帯魚たちは明らかに積極的にエサを追わないからだ。また、水族館に行けば分かるが、水槽のウツボやサメは同居の小魚を捕食しない。これは十分なエサを与えられているからだそうだ。
飼育環境下と自然界を同列に並べることは危険かもしれないが、少なくとも魚は胃がエサで満たされている場合には、多少なりとも活性が低くなっていると考えていいかもしれない。
「潮流」が活性を左右?
では、「空腹であれば魚の活性は高い」という話になりそうである。しかし、話はそれほど単純でもない。
東京湾をホームとする私はショア・オフショア両方でシーバスを狙いに行くことが多々ある。ハイシーズンとなるのは春と秋であるが、それはなぜか?春にはバチ抜け、秋にはベイトフィッシュが多数溢れ、シーバスの活性が高いからだ。ということは、活性が高まっている春と秋のシーバスは比較的容易に腹を満たせる環境下にいるため、「空腹であれば魚の活性は高い」という状況と真逆の状態である。
また、ジギングで青物を狙った場合、家に帰ってさばいてみたら胃袋にイワシが大量に詰まっていたということもあり、空腹でなくても活性が高いこともあるのである。
各船宿の釣果情報を見ているとよく出てくる言葉で「潮流れよく」「潮が流れず」というフレーズがあるが、基本的には魚の胃袋の状態よりは潮の流れの方が活性と直結する要素と考えた方がよさそうだ。
コマセでアジは満腹になるのか
東京湾では、数多くの船宿が毎日にようにアジ船を出している。そして連日安定した釣果を出しており、それを合計すると東京湾全体で1日数千匹といった数のアジが釣られているものと思われる。
しかもそれが連日続くにもかかわらず、アジが絶滅するわけでもないのであるから、東京湾全体に生息するアジの数はもはや想像もつかない。
各船長は濃い反応に当てて船をポイントにつけるであろうから、自分が乗った船の下にいるアジの群れは少なくとも数十匹というものではない。おそらく数百匹、もしかしたら数千匹という数で群れているものと思われる。
その群れに対して、釣り人がコマセを頑張ってまいたらどうなるであろう。人間でいえば、数十人を超える会食の場に特上握り寿司1人前がある程度の感覚ではなかろうか。当然、全てに行き渡ることはないと考えていいだろう。そうすると、コマセをまきすぎても大きな問題にはならない。
東京湾で主流の「イワシミンチ」
東京湾LTアジで使用されるコマセはイワシミンチが主流である。イワシミンチはその名の通り、「ミンチ」であることから粒が細かい。イワシの皮や骨、内臓など粒の大きな物も混じってはいるが、大きな物はビシの網目に引っかかって出ていくことはない。そうすると、アジを寄せるために効果を発揮しているのは、粒の細かいミンチである。
人間でいえば、豆まきで高いところから撒かれた豆を頑張って口でキャッチして1粒ずつ食べるような感じと思ってもらえばいいかもしれない。例えが正確かどうかはさておき、どうだろう。満腹になるには相当時間がかかるのではないだろうか?
アジに置き直せば、ビシからまかれた細かなイワシミンチを他のアジと競いながら食べることになり、かなり食べないと胃袋は満たされることはないため、満腹による活性ダウンはあまり考えられるものではないと言えるだろう。