「旬のサカナは美味しい」そう思っている人が殆どでしょう。しかし中には旬なのに美味しくない場合も。では、そもそもサカナの旬とは何なのでしょうか。
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旬という言葉の由来
「旬」という言葉は、古代から行われている朝廷行事の一つである「旬義」に由来しているようです。旬義とは『天皇によって定期的に開かれていた酒宴のこと』で、平安中期以降に年2回、4月と10月に開催されていたようです。
4月に行われる旬義は「孟夏の旬」、10月に行われる旬義は「孟冬の旬」と呼ばれ、それぞれの旬義が開催される季節に最もふさわしいものが賜物にされました。「孟冬の旬」には、「氷魚(ひうお)」と呼ばれる「鮎の幼魚」が賜りものにされたことから、この時期の鮎が最も美味であったと考えられています。
そこから派生して「旬」とは魚をはじめとして、野菜や果物などの食材が魚が最もおいしくなる時期という認識が広まることになったと言われています。
2種類ある「サカナの旬」
一般的に旬と言うと美味しいイメージだけの人がいるかもしれませんが、実はそれだけではありません。サカナの旬には大きく2つの意味があり、一つ目はもちろん「味」の旬ですが、もう一つ「量」の旬もあります。
サカナは産卵前が最も美味しくなると言われているため、産卵のためにさくさん栄養(特に脂肪分)をたくさんに蓄えている個体はものすごくおいしいです。一方で、産卵期はサカナが沿岸に近づいてくるため、漁獲量も増えてきます。
そのため、「旬=美味しい季節」ではなく「旬=漁獲量が最も多い時期」という考え方もできるわけです。
産卵前後が狙い目
例えば、春に産卵を迎えるサカナの旬は「冬」で、秋に産卵を迎える魚の旬は「夏」になります。一般的に冬は魚が美味しい時期と言われますが、これは春に産卵する魚が多いからです。
産卵を終えた魚は産卵で疲労して、栄養価も味も落ちてしまいますが、徐々に栄養を蓄えて、疲労が回復する秋ごろにはまた美味しくなるため、「二度目の旬」と呼ばれています。
ただし例外もあり、サカナの中には産卵前でなく、産卵期が最も美味しいと言われている種類も存在します。例えば、「ハモ」や「ドジョウ」は産卵期が最も美味しく、その産卵期は夏となることから「夏」が旬に該当します。
漢字で旬がわかるサカナたち
サカナの中には、旬が一目で分かるものもいます。季節ごとに代表するサカナを少しだけ紹介しましょう。
春が旬のサカナ
「鰆(サワラ)」はその文字が示す通り、春が旬の魚として知られています。
日本の地形は南北に長いため、地方によって旬が異なる場合もあります。
「春告魚(ニシン)」も同じく春が旬の魚です。その昔は、北海道で大量に漁獲されていましたが、近年大幅に減少したことから輸入が大半を占めているようです。
このほかに春が旬の魚として、「マダイ」「ワカサギ」 「サヨリ」「メバル」などがあります。
夏が旬のサカナ
前述のハモ、ドジョウの他にもイサキ、スズキ、キハダマグロ、メバチマグロ、マカジキ、イシダイ、ゴマサバ、ウナギ、コイ、シイラ、アナゴなど多くのサカナが夏に旬を迎えます。
ウナギは「土用の丑の日」があることから夏が旬と思われていますが、天然ものは冬眠前の時期が最も美味しくなるようです。ほとんどが養殖のため、「土用の丑の日」に合わせて、夏に最もおいしくなるよう調整されているようです。
秋が旬のサカナ
秋と言えば「秋刀魚(サンマ)」は旬のサカナの代表でしょう。しかし、サンマも脂がのっている北海道~東北エリアを過ぎると、だんだんと脂が落ちていき、銚子沖まで南下するころには脂肪分が減ってしまいます。紀伊半島に来る頃には脂肪はかなり減ってしまっているので、秋の味覚を楽しめるのは実はほんの一瞬なのです。
このほかに秋が旬の魚として、アジ、アマダイ、カジキマグロ、カマス、金目鯛、黒鯛、などがあります。
冬が旬のサカナ
「鱈(タラ)」はその漢字が示すとおり、冬が旬の魚です。鍋物にもよく使われますね。北海道と東北地方が主な産地です。このほかに冬が旬の魚としては、カレイ、ブリ、ヒラメ、石鯛、マグロなどがあります。
魚介類で見れば、牡蠣(かき)も冬に旬を迎えるため、殻の中いっぱいに身が詰まっている時期です。