新型コロナウイルス感染症問題の発生以降、海産物の売れ行きが悪くなっているニュースが伝えられています。この傾向は、世界的なものになっているようです。
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水産養殖生産量が減少
国際連合の専門機関のひとつ「国連食糧農業機関(FAO)」は、先日公表した2020年11月版世界食料レポートの中で、2020年の世界の水産養殖生産量が前年比1.3%減少するという予測を発表しました。(『FAO20年予測 世界養殖初の減産
天然も減、コロナ長期化が影』みなと新聞 2020.11.19)
水産養殖生産量は調査開始以来一貫して伸びを記録しており、前年を下回るのは今回が初めてのことになるそうです。また天然水産物の漁獲量についても、わずかながら前年を下回る見通しとなっています。
この予測は何を意味するのでしょうか。
原因は新型コロナウイルス
今回の水産物生産量の減少は、やはり世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響によるものだと見られています。
水産物の用途別生産量を見ると、飼料用のものは生産量が1.3%増加するという予測になっている一方で、食用については1.1%減となっています。これは新型コロナウイルスにより食用水産物の消費量が減ったということを表すと考えられます。食用水産物は飼料用水産物の10倍ほどの生産量があるので、全体としては大きな減少になっています。
また魚価についても、2014年から2016年の平均魚価を100とした「魚価指数」について、2020年1~9月にかけては96という数値になっています。消費量が減ったために価格の下落が発生している、と考えれば自然な結果です。
大幅に減少したワケ
新型コロナウイルスの感染拡大期には、世界各国で都市封鎖(ロックダウン)や経済活動の制限が行われました。これにより水産物の加工・取り扱い設備が閉鎖し、人々の活動も制限を受けたことで、生産、加工労働が制限され、結果として生産量の低下につながったものと思われています。
また、航空貨物減便によるグローバルな物流の減少も、近年拡大傾向にあった国際的な水産物の取引にダメージを与えています。加えて「ステイホーム」による外食から中食・内食への移行が起こったことから、それに伴う高級魚介類の消費減も発生。複数の原因により、水産物生産量の減少予測につながったのです。
新型コロナウイルスワクチンの開発が進まない現状を鑑みれば、生産量減少は長引くものと考えるべきでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>