秋が深まると美味しくなる魚・カマス。干物や塩焼き専用の魚と思われていることも多いのですが、種類によっては「刺身」でも美味しく食べることができます。
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旬のカマスを釣る大会が開催
東シナ海に浮かぶ長崎五島列島の五島市玉之浦町で、子どもたちの参加するカマス釣り大会「漁火フィッシング」が開催されました。
漁業への理解を深めてもらおうと玉之浦町の商工会の青年部が毎年開催しているもので、今年は小学生23人が参加しました。
8隻の船に乗り分けて日暮れ頃に出港し、沖合の水深40mあたりに群れをなすカマスを狙いました。波の穏やかな湾内での釣りは、イトヨリダイ、サワラの子など外道混じりで楽しめたそうです。
参加者たちはクーラーボックスがパンパンになるほどのお土産を確保し、持ち帰って美味しく食べたとのことです。(『今が旬!カマス漁の船釣り体験【長崎県五島市】』テレビ長崎 2020.10.3)
2種類の「カマス」
さて、「カマス」と名がつく魚は数種類あるのですが、おもに流通に乗るのはそのうち「アカカマス」と「ヤマトカマス」の2種類です。このほか南の地域では「バラクーダ」とも呼ばれ大型になる「オニカマス」が釣りや食用で人気があり、流通することもあるようです。
アカカマスとヤマトカマスはいずれも全国的に水揚げがあり、流通しています。この2種は腹鰭と背びれの位置関係で判別することができますが、ときに混同されることがあるようです。
しかし、この2種類を一緒くたにしてしまうと、クレームのもとになるかもしれません。なぜならアカカマスは「アブラカマス」と呼ばれるほど脂が乗り、身質もよいのに対して、ヤマトカマスは「ミズカマス」と呼ばれ身が柔らかく、味に大きな差があるからです。
「カマスは塩焼き」は昔の話
カマスといえばかつては「焼き物専用魚」とでも言えそうな扱いを受けており、片袖開きの一夜干しで流通するのが一般的でした。しかし産地では鮮魚の美味しさがよく知られており、近年の「生魚志向」の高まりによって「刺身で美味しい魚」としての知名度が高まってきています。
気になる刺身の味は
カマスの中では比較的身がしっかりしているアカカマスでも、身には水分が多く鮮度が落ちやすいのですが、流通の発達のおかげで刺身用鮮魚が出回ることも多くなっているようです。
産卵後の一時期を除いて味の落ちないアカカマスですが、秋から冬にかけては非常に脂が乗り、柔らかで口溶けの良い身と相まって、刺身はまさに絶品。
振り塩をしたあと酢じめにして皮目を炙ったものや、強めに締めて寿司ネタにしたものも高い人気を誇ります。最近では小田原で「カマスの刺身」が名物となっており、町おこしにも活用されています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>