スマを知っている人はなかなかのサカナ通かもしれません。サバ科の中では非常にマイナーな存在であるサカナですが、最近養殖業界で注目を浴びています。
(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)
「スマ」って知ってる?
マグロやカツオなど有名な魚の多いサバ科。しかし、その一種である「スマ」を知っている人はあまり多くないのではないでしょうか。
スマは最大で1m、通常は60cm前後とカツオとほぼ同じ大きさであり、見た目もよく似ています。違うのは背中に入った縞模様と、胸鰭の下にある斑点模様です。スマという名前は、この縞模様に由来していると思われますが、この斑点模様をお灸(やいと)の痕に見立て「ヤイトガツオ」と呼ぶ地方もあります。
小さな群れで外洋を回遊しており、まとまって獲れることはあまりありませんが、定置網に入ったり、他の魚の漁に混じって漁獲されます。
実は美味なサカナ
実はこのスマ、知る人ぞ知る美味なサカナ。身質はやや白みがかった赤みで柔らかく、マグロとサワラの中間のような質感で舌触りがとても良いです。さらに小型でも脂が乗りやすく、旬の個体は身まで白濁するほど。
その味は「サバ科で一番」とも言われるほど。残念なことに鮮度落ちが早く、流通に乗ることが少ないのですが、新鮮なものを見かけたら間違いなく買いの魚です。
「媛スマ」が歴史を変える?
さてこのスマ、最近は意外なことに「養殖に向く魚」として注目されつつあります。
サバ科の回遊魚であるスマですが、マグロほどは大きな生簀を必要としないため、既存のブリやマダイの養殖設備が流用できるのだそう。さらにブリと同様の餌量で、1年半で4kgにまで成長し、キロ単価も同じブリの3倍にもなるといいます。そのため「大きな利益を生む新規養殖魚種」として脚光を浴びているのです。(『スマ商業養殖へ前進 ブリ並みコストで単価3倍』みなと新聞 2016.9.3)
とくに養殖が盛んなのが愛媛で、採卵から出荷までを通して行う「完全養殖」のシステムを完成させ「媛スマ」のブランド名で出荷しています。養殖スマは天然物と比べてもさらに脂のりがよく、「全身大トロ」とも呼ばれているそう。(『クロマグロの代替魚とも言われる「養殖スマ」。知る人ぞ知る、脂の乗った旨味を魚盛16店舗にて期間限定で提供』PRTIMES 2020.1.24)
資源減少や価格の高騰が進むクロマグロ、インドマグロに代わる美味な赤身魚として、今後より一層ポピュラーなものになっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>