「冬が旬」というイメージのサバ。東京湾では真夏でも美味しい「トロサバ」が釣れていますが、実は「マサバ」と「ゴマサバ」の2種類のサバが混在しています。
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東京湾に現れた「トロサバ」
10年ほど前、東京湾奥で大型のサバが釣れ盛って話題になりました。しかも、一般的な「サバの旬は冬」というイメージに反し、真夏の盛りにも関わらず、40cmに迫るような大型個体が連日釣れたのです。
それまで基本的に「アジ釣りの外道」でしかない存在だったサバですが、大型で引きもよく、釣り味が良いことから次第に人気が出てきました。何よりそのサバは味がとても良く、脂が乗って身が白くなるほどで「トロサバ」という通り名もつけられました。
いくつかの船宿から「トロサバ釣り」専門の釣り船も出るようになるなど、一世を風靡する存在となったのです。
東京湾に定着した「トロサバ」
現在、東京湾におけるトロサバ釣りはやや下火になっていますが、変わらず群れは入っており、アジ釣り船では外道としてよく見る顔となっています。大きいもので40cmを超え、丸々と太って脂がよく乗っています。
市場での存在感は日に日に増しており、流通に乗ることも増えました。かつては「松輪サバ」と一緒にされることも多かったようですが、最近ではそのまま「トロサバ」の名前で店頭に並ぶこともあります。
「マサバ」と「ゴマサバ」
東京湾で釣れるトロサバですが、実は2種類のサバが混在しています。「マサバ」と「ゴマサバ」です。ゴマサバは腹部に小黒斑がありますが、全体的にはマサバによく似ています。
夏場でも美味しいゴマサバ
いずれも脂の乗りは個体差が大きいのですが、夏場においてはゴマサバのほうが脂の乗りが良いことが多いです。
ゴマサバはそもそも釣り人の間では「夏に美味しいサバ」として知られる存在でした。ただそれは夏に大きく味を落としがちなマサバと比べ、ゴマサバはそこまででもなく、夏にも比較的美味しく食べることができる、という程度のニュアンスでした。
現在では様々な要因から旬の時期にずれが起こっており、真夏でも美味しいマサバが採れるのですが、しかしやはりゴマサバが夏の主役と言っても間違いないと思われます。しめ鯖はもちろん、味噌煮や塩焼きでも大変美味です。なお、人によっては刺し身で食べることもありますが、マサバ同様アニサキスのリスクがあるので注意が必要です。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>