身近な水辺に生息し、釣りで気軽に狙うことができるテナガエビ。味もよく、調理してもとても美味しいエビです。今回はそんなテナガエビ釣りの生態・時期・竿・仕掛け・釣り方などをまるごと紹介します。また、テナガエビは夜行性のため夜にも狙いやすく、昼と夜の釣り方にもスポットを当てて解説していきます。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS関西編集部 松村計吾)
テナガエビの生態
テナガエビは日本に約15種が知られていますが、ほとんどは南方系の種類で、本州ではテナガエビ、ヒラテテナガエビ、ミナミテナガエビの3種類がよく見られます。ヒラテテナガエビは川を遡るのが好きなど、それぞれ棲み分けしている事が知られています。その名の通り、「手(鉄脚と呼ぶ)が長い」エビですが、雌に比べると雄エビの方が遙かに長く立派なのですぐに区別が付くでしょう。
東京なら多摩川や荒川、大阪なら淀川など、大都市近くの河川にも生息しており、近場で手軽なテナガエビ釣りは幅広い層に人気があります。
両側回遊性
テナガエビ類はほとんどが両側回遊性のエビとして知られています。両側回遊性というのは、一生の中で川(淡水エリア)と海(汽水域を含む海水エリア)を行き来する習性のある生物で、魚ではアユやサケ、サクラマスなどが知られています。
テナガエビの産卵は概ね5~9月と期間は広く、多くは夏場に産卵。淡水域で産卵したテナガエビは卵を雌が腹に抱えた状態で過ごし、孵化するとその幼生は川を下って汽水域、海水域へと下り、稚エビとなって再び川を上り汽水域や淡水域で生活します。そのため、幼生自体は海水域に下らないと成長できないとされています。
陸封型もいる
そのため川にしか存在しないかと思いきや、川につながっていない湖沼などの止水域でも釣ることができます。実はマテナガエビは一生淡水で過ごす陸封型もおり、こちらは海水域に下らなくても繁殖を行えます。
もともと海と繋がっていた湖沼が、繋がりがなくなり取り残されたことで適応したとの説。またヒラテテナガエビ、ミナミテナガエビは両側回遊性だが、マテナガエビはそもそも両側回遊性ではなく生まれた環境に留まって育つ説などがあり、詳しいことは完全には解っていないようです。とにかく、さまざまな水辺に生息するエビということです。
初心者向けのテナガエビ釣り
テナガエビはエサを見つけるとすぐに寄ってくるほど貪欲なので、場所選びや釣り方のちょっとしたコツを知れば誰でも釣ることができるターゲットです。
道具を揃えるのも安く済むので釣りの入門や、家族とのちょっとしたアクティビティとしてもオススメ。身近な水辺に生息しているので、ぜひ気軽に挑戦してみて下さい。
テナガエビ釣りの時期
地域によっても多少違いがありますが5月の中旬から釣れ出し、梅雨の頃が最盛期となります。真夏の頃になると卵を抱えた雌が釣れる事も増えてくると同時に、大型の雄テナガエビが減ってきたり、その特徴である大きな鉄脚が欠損したエビが多くなります。
そのような理由から、大型の立派なエビを狙う場合も梅雨前後がオススメです。シーズンとしては秋頃までは狙うことができ、水温が下がるとともに釣りにくくなります。
冬はどうしている?
テナガエビの寿命は環境や個体差にもよりますが1年~3年ほどとされており、低水温期も死滅したり冬眠はせず活動はしているようです。ただ、冬は水温の安定する深場に落ちることや、活性も下がってエサを食べる頻度も下がるので、冬に釣果を上げるのはかなり難しいでしょう。
テナガエビ釣りの竿
テナガエビ釣りの竿は全長2mまでのノベ竿が使いやすいです。釣具店に行くと初心者用の竿と仕掛けのセットが2000円程度など比較的安価で売られているので、入門者の方はそちらを買うのもいいでしょう。そこまでタックルにこだわる必要はなく、取り扱いやすい長さであればリールのあるものでも大丈夫です。
テナガエビ釣りの仕掛け
仕掛けは主に使われるウキ釣りとミャク釣りの2種類を基本の釣り方も含めて解説します。
テナガエビ釣りのハリ
ハリはどの仕掛けでも共通で、テナガエビ専用のものがいいです。また、袖バリの4号程度やタナゴ針でも代用できます。
ウキ釣り仕掛け
ウキはテナガエビ釣りでは定番の連玉ウキの他、玉ウキやトウガラシウキ、棒ウキなど何でもOK。そんなに引っ張り合いの力勝負にはならないので、仕掛け例ではサルカンの部分に自動ハリス止めを使ってハリス交換などをしやすくしています。
市販のウキセットも売られているので、それを竿に取り付けるだけでも大丈夫です。ウキ下はテナガエビがエサを持ったときに違和感を感じさせないよう、やや仕掛けを底に這わせるくらいに設定しましょう。
ウキ釣りの釣り方
テナガエビはエサを自分のすみかまで運んでから食べるので、アタリがあるとウキがスッーと持っていかれます。ウキが止まったらエサを口に運んで捕食している状況ですが、すぐには竿を上げず確実に口に針を運ぶまで20秒程度待ってから竿を上げましょう。この駆け引きがテナガエビ釣りの面白さです。
アワセをミスして針掛かりしなくても、同じポイントを狙うと再度アタリがあることが多いので諦めずに挑戦してみましょう。
ミャク釣りの仕掛け
ミャク釣りはウキを付けず、糸とハリだけのシンプルな仕掛けで障害物の間などを探る釣りです。
目印があるとテナガエビがエサを持っていくのが分かりやすくなりますが、竿への反応でもある程度分かるためなくても問題ありません。
ミャク釣りの釣り方
障害物の間などに仕掛けを入れてアタリがあるまで待ちます。アタリがあったらウキ釣り同様にすみかまでエサを持って行かせてタイミングを見計らって釣り上げます。ウキ釣りより竿にダイレクトにエビの感覚が伝わるのがこの釣りの面白さで、アタリがあったらすみかへ移動するまではあまり糸を張りすぎず緩め過ぎずで、しっかりエサを持ち運ばせます。
また、エサを食べ始めたらちゃんと針掛かりしているか少しだけ引っ張ってみながら、針が口に掛かった重みを見極めて釣り上げるのがミャク釣りのコツです。
テナガエビ釣りのエサ
テナガエビを釣るために効果的なエサを紹介します。
虫エサ
アカムシやサシがサイズ的に使いやすいです。また、ミミズやアオイソメ、イシゴカイ(ジャリメ)などを5mm程度にカットしても釣れます。半日釣りをしても、ミミズなら数匹あれば十分量は足りるでしょう。
その他の代用エサ
虫エサが食いもよく定番ですが見た目などが苦手な人も多いと思います。実はテナガエビはタンパク質のものであればわりと何でも食べるので、カニカマや魚肉ソーセージ、イカ、エビ、ベビーホタテなど色々な代用できるエサがあります。あまり大きいとハリ掛かりしにくいので米粒サイズに切って使いましょう。