神奈川県の管理釣り場「ベリーパークインフィッシュオン!王禅寺」でインストラクターを務める傍ら、ムカイフィッシングという釣具メーカーでタックルの開発を行っている筆者が、サカナの「色覚」について解説します。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース関東版 永井浩明)
魚の色覚の謎に迫る
「ベリーパークインフィッシュオン!王禅寺」の対象魚は主にトラウト。そう、ニジマスです。管理釣り場での釣りは、「エリアフィッシング」なんて呼ばれていて、使用するルアーは、スプーンやクランクなど。カラーは、驚くほど豊富。
今回の連載は4回に渡り、”色の謎”に迫ります。仕事柄、毎日池を回りながら、どんなルアーが釣れているのか見ています。ここでは黒いスプーン、そこでは赤、あちらでは黄色。「なぜ、同じ池で同じような時間帯でも釣れるカラーが違うのだろう?」「魚にとって、色っていったい何だろう?」この疑問を追求しようと思ったのは日々の業務から。
以前、「犬が見えている世界はモノクロ」という話を聞きました。子どものころに飼っていたので、その話を聞いたときは「そうなのか」と、驚いたことを覚えています。また、「モンシロチョウは、人には見えない配色が見える」といいます。人間にはわからない雄雌の違いを、彼らは紫外線で見分けているらしい。花も虫に蜜を運んでもらうため、色の工夫をしています。
特殊フイルムを入手
あれこれ調べていると、虫たちの目線(視界)で撮った写真を発見しました。特殊なフィルムで撮ったその写真には、人間の目ではわからない違いが写っていました。さっそく、このアイテムを手に入れるため昆虫館へ。
フィルム越しだと、花は中央のあたりだけ色が違って、まるで蜜の場所を教えているかのよう。チョウの模様も、それぞれ意味があるように感じます。
では、魚の視界はどうでしょう?「大きな脳を持っているわけではないので、もしかしたら同じかも!きっと、紫外線が関係あるに違いない」。人が見えるすべての色は分からなくても、カラーローテーションした途端に釣れることがあるのだから、そこには何か意味があるはず。
フィルム越しでルアーが全く違う色に
「よし、これを使ってルアーを見てみよう」。釣れる色の謎が分かるかもしれない。
用意した写真(1)は、人間目線でみた色。どこにでもありそうなルアーを集めてみました。そしてもう1枚は、フィルム越しに撮った写真(2)。どうでしょう?人の目では分からなかった配色が見えてきませんか?人には明るく見える黄色や赤、オレンジが暗くなっています。反対に、暗いイメージだった青は驚くほど明るく見える。
先に紹介した花の写真も、黄色の花より紫の花びらが鮮明に。もし、魚も色を同じように認識しているとしたら、「これまで投げていたカラーの意味ってなんだろう?」と、少し切ない気持ちになりました。同時に、なんだか急に共通項を発見したような気がしてワクワク。「よし、このフィルムを持って池を回ってみよう」
人間とは異なる色覚
いつものように、釣り人に声をかけながら「どんな色が釣れてますか?」とルアーを見せてもらいます。怪しいアイテム越しに、ルアーをのぞいている姿に当然、「また何かおかしな事やっているな」と思いながら?も、温かく見守ってくれました。
この日も釣れているカラーはいろいろ。黒、黄色、赤、オレンジ。でも、フィルムで見ると、ほとんど同じ暗めの色。人から見たらばらばらの色も、魚から見れば同系色だったのかも知れません。
私は、今までさまざまな実験を行ってきました。バイトマーカーの検証では、さまざまな色の丸いシールをルアーに貼って、釣果を調べたことがあります。これが予想に反し、思わぬ結果に。一番釣れると思っていたアワビシールが、まさかの惨敗。釣りはいつも同じコンディションではないので、その日がたまたまよくなかったのかもしれません。
しかしその実験の最後、暗めのクランクにグローシールを貼ったところ、それまでさんざん投げたルアーに見向きもしなかった魚たちが、なんと2投で2尾釣れました。当時はまだフィルムの存在を知らなかったため、ほかの理由を考えていましたが、今となってはその意味が理解できます。
<週刊つりニュース関東版 永井浩明/TSURINEWS編>