問診票
ロングハリスを使うコマセマダイですが、昔は4号10mといった具合に一本の通しハリスでしたが、10年ほど前から、スイベルを介して異なった太さのラインを連結するいわゆる"テーパー仕掛け”、”連結仕掛け"が主流になってきました。なぜテーパー仕掛けが流行ってきたのか、その意味やメリットを教えてください。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤 惣一郎)
診断結果
コマセマダイ、特に東京湾口で大人数の乗り合い船の流し釣りでは、2本のハリスをスイベル(サルカン)で連結するテーパー連結仕掛けがスタンダードになってきています。先(下)ハリスがミキ(上)ハリスより細いのが一般的です。
処方箋
この連結の単純なメリットを考えると、(1)針に近い先ハリスがヨレたり傷んだときに、先ハリスのみの交換で済むので経済的。(2)回転スイベルがあることによってハリスヨレを予防出来る、ロングハリス仕掛けが扱いやすくなる。(3)細い先ハリスで魚の警戒心を減らしつつ、ミキの太ハリスで仕掛け全体の強度を保つ。などが挙げられます。しかし、実際にはこのような単純なものだけではなく、スイベルを入れた連結仕掛けにはさらに奥の深い意味があるのです。
水面からのタナ取りがキモ
一昔前のコマセマダイ釣りは、ビシアジ釣り同様、ビシを底まで降ろし、底からコマセを振りつつ指示ダナまでビシを上げてくるタナ取りが一般的でした。それは底からの方が、ビギナーでもタナが取りやすく、コマセとハリに付けたつけエサが同調しやすく、イメージもしやすくなるからです。朝イチや新しいポイントでの第一投、第二投であれば、高活性のマダイがすぐに喰ってくるチャンスもあります。
しかしこの方法は、底まで降りたビシから底付近で大量にコマセが撒かれることで、エサ取りが集まりやすいこと、そして何よりも警戒心の高いマダイを散らせてしまうデメリットがあります。
あるいは一日の釣りの中で、ロングハリスをムーチングロッドの置きザオスタイルで待っていたら偶然、エサ取りにとられず、残ったつけエサが、マダイの目の前に行き、マダイが釣れることもあります。ですから今でも、底からのタナ取りでマダイ釣りを行う地域はあります。しかし、その釣り方ではよほど条件の良い日でなければ数は伸びません。
一方、魚探や船長の指示で水面からタナをとることのメリットは、深くまでビシを落とさないことで、マダイ、特に良型マダイを驚かせない、散らさないことにあります。また、エサ取りも寄せにくくなります。そして何よりも、ビシが高い位置にあるメリットは「高い位置からつけエサを落とし込める」ということに他なりません。
水面からのタナ取りではリールカウンターではなく、必ずミチイトマーカーを頼りに正確なタナ取りが必要になります。ビギナーなど、慣れていない釣り人は時にタナぼけしやすいリスクもありますが、近年、乗り合い船でコンスタントにマダイの数、型をあげている地域の船宿は、ほとんどが水面からのタナ取りなのです。
コマセとつけエサの最適な関係
積極的にエサやルアーを動かしてマダイを釣るテンヤマダイやタイラバが近年流行しているように、マダイは動くエサを嫌がるのではありません。マダイに限らず魚を釣るためには、その魚の習性を理解しなければなりません。
マダイはコマセ煙幕よりも下層で悠然と機会を伺いつつ、捕食の際は他の魚に比べものにならないほどの遊泳力で一気に上昇反転し、落下してくるエサを捕食します。コマセマダイのロングハリスはマダイを脅かさないというより、コマセ煙幕からフワリと自然に落下するつけエサの動きを演出する装置なのです。
しかし時に10mを超えるハリス長は釣り人を迷路に誘い込みます。マダイを恐れずコマセに寄ってくるエサ取りが更にこの釣りを難しくします。コマセマダイではエサ取りを避けつつ、マダイの捕食スイッチを入れるコマセワークとつけエサの最適な落下状態を、その時その時の潮の流れや海底地形、魚の居場所をイメージしながら積極的に釣り人が作りだす”攻めの釣り”であり、その基本はコマセで浮いて来たやる気のあるマダイの眼前につけエサを落とし込んで誘う「落とし込み釣法」なのです。そして、この落とし込み釣法で有効になるのが、連結部にスイベルの重量がある仕掛け=テーパー仕掛けになるのです。