刺し身の名脇役といえば「つま」。あの食材はなんのためにお皿の上に乗っているのだろうか。そして食べるべきなのだろうか。意外に知らない「つま」を解説します。
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「つま」ってなに?
刺身を食べる時にほぼ必ずと言っていいほど、同じお皿に乗っているものがありますよね。そう、【つま】です。
大根の千切りを筆頭に、ワカメなどの海藻や大葉など、よく考えると意外といろいろな食材がお皿の上に乗っています。どういった理由でお皿の上に乗っているのでしょうか。詳しく調べていきましょう。
本当の名前は【あしらい】
私達は普段、大根の千切りなどを「つま」と呼んでいますが、実は大半の人はこの【つま】について大きな勘違いをしています。
まず私達が【つま】だと思っているものの本来の名前は【あしらい】といいます。【あしらい】とは料理の盛り付けに使われる物の総称です。
あしらいの種類
このあしらいは更に見た目や形、置く場所によってさらに「つま」「けん」「薬味」の3つに分けられます。近年では、あしらいは「つま」と呼ばれることが多いですが、厳密に分けるとこのように分けることができます。
「つま」は、刺身に添えられている飾り野菜や海藻などのことを言い、「けん」は、栄養バランスを整える目的や、刺身を食べたあとの口直しとして用意されています。「薬味」は、文字通り薬味として使用したり、季節感を表現したりするために添えられているものです。
褄(つま)の定義と役割
端切れやヘリを意味する『褄(つま)』が語源だと考えられています。つまはさらに位置によって呼び名が変わり、切り身に敷かれた大葉などの葉ものは”敷きづま”、紫芽じそや赤芽などの”芽づま”、防風や花穂じそなど刺身に立て掛けるように添える”立てづま”と分かれていきます。青ジソ、あさつき、ワカメ、パセリなどが代表的な食材と言えるでしょう。
剣(けん)の定義と役割
「けん」は千切りに切った細く尖った野菜のことを言います。近年では、この剣が【つま】と呼ばれていることが多く、大根以外にも人参、きゅうりなども一般的です。
薬味の定義と役割
生魚独特のくさみを消す役割や、見た目の彩りを良くする役割を担っています。わさびやしょうがなど、風味の強い食材が使われます。
漢字は「妻」と「褄」の2通り
【つま】は漢字にすると「妻」と「褄」という2つの漢字があてられますが、それぞれ違う語源が存在します。
妻
こちらの字をあてる説は主材料(主人)を支えて、殺菌作用などで料理全体の調和をとることから夫婦にたとえられて用いられています。
褄
この字には「端」という意味があり、主材料の端に添えることからこの字をあてるとの説があります。しかし、刺身を大皿盛りや船盛りにする場合は器の中央に「つま」を置くこともあるため、最近ではあまり用いられません。
つまには殺菌・防腐の役割もある
先にも少し記載しましたが、ツマには彩りを良くする他にも様々な効果があります。私達がよく見かけるワサビやショウガ、大根は一緒に置くだけで様々なメリットがあります。
まず、ワサビですが、ワサビ独特の辛味の主成分はアリルイソチオシアネートといい、抗菌効果や殺菌効果、食欲増進効果などがあります。ショウガの場合も同様に、辛味成分のショウガオールが抗菌、抗酸化作用を果たしてくれます。
敷きづまである大葉にはペリルアルデヒドという成分が含まれており、防腐作用(制菌作用) があります。剣(けん)はサカナから出る余分水分を吸い取り、臭みとりの効果に期待ができます。
また、口直しの効果もあり、刺身を口に運ぶ前に大根のつまを醤油を付けずに食べると、口中に残っている他の料理の味を消すことができます。定期的にツマを食べることで、食材の味を一層引き立てることができるようになるのです。
江戸時代からの文化
【つま】の歴史は古く、世間に浸透するようになったのは江戸時代の頃。サカナを生で食べる文化が根付きはじめ、少しでも保存期間を伸ばすために用いられるようになったのが最初だそうです。細かい時期は定かではないようですが、刺身とともに成長してきた日本古来の文化だと言えます。
つまは単に刺身の見栄えをよくするだけでなく、殺菌効果、解毒効果のある食材が使われ、先人の知恵と工夫がこらされています。
つまの食べ方
お皿の上に乗っているからと言って、
・食材同士の仕切り
・彩りを出すため
・かさ増し
こういった理由から食べない人も多いかも知れません。鮮度が低いと色が変色していたりすると敬遠してしまうこともあると思います。しかし、【つま】には食欲を増進したり、消化を助ける酵素を持っている食材も存在します。もちろん鮮度にもよりますが、食べてみてはいかがでしょうか。
ツマと一緒に刺身を食べることで、今まで感じることができなかった旨味を味わうことができるようになるかも知れません。