だんだんと気温も上がり、春真っ盛りですね。魚にも名前から春を感じられるものがあります。「魚へん」に「春」と書く『鰆』です。読み方は『サワラ』。この魚の旬は、実は春ではなく冬。なぜ漢字に春がつくのでしょうか?調べてみました。
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『鰆』(サワラ)は春の季語
『鰆』は春の季語にもなっており、瀬戸内では「春告げ魚」として古く愛されてきた魚です。
しかし、この『鰆』という漢字が使われるようになったのは近世以降であり、それ以前は、体長が細長く「狭い腹」から「狭腹(サワラ)」と呼ばれていたとする説も存在しています。
ではなぜ、『鰆』という漢字が使われるようになったのでしょうか?
鰆が美味しい旬は冬
『鰆』という漢字から「春が旬で美味しい季節なんだろうな」と連想する方も多いのではないでしょうか。しかし、鰆の身に脂がのり、最も美味しいとされる季節は冬なのです。
なぜ一番おいしい季節ではなく、少しズレた「春」が漢字に使われたのでしょうか。
これには旬の解釈の違いに原因があると考えられています。一般的には一番美味しい季節が旬とされがちですが、鰆の場合は漁獲量が最も多い季節を旬としています。
『鰆』の名前の由来はここにあります。
地域によって変わる旬
鰆は産卵のために4月から5月ごろにかけて太平洋から瀬戸内海に入ってきます。瀬戸内海での漁獲量は5月にピークを迎え、市場にたくさん出回ることから関西での旬は春とされています。「鰆の値段は岡山で決まる」といれるほど、特に岡山では珍重され、様々な料理に多様されます。
一方、関東での旬は冬とされています。脂がたっぷりとのった鰆は『寒鰆』と呼ばれ、高級魚として高値で取引されています。
地域で楽しみ方も変わる
地域により旬の異なる鰆。
関西では脂が少ないさっぱりとした味わいから、西京焼きなどの濃い味付けで美味しく食べられています。またこの時期に取れる卵巣は味もよく、真子や白子と共に土佐、和歌山、岡山では好んで食べられています。珍味の「からすみ」の代用品としても用いられます。
関東では、しっとりとした口当たりで濃厚な脂を楽しめることから刺身での食べ方が有名であり、焼き魚などとしても食卓に並ぶことが多いようです。
春の訪れを感じるために、今夜の晩御飯のメインに鰆はいかがでしょうか?
<近藤/TSURINEWS・サカナ研究所>