「いないいないばあ」をする恥ずかしがり屋のカニ『カラッパ』を食べてみた

「いないいないばあ」をする恥ずかしがり屋のカニ『カラッパ』を食べてみた

恥じらって顔を隠しているように見える変わったカニ「カラッパ」。水族館の人気者ですが、食べてみました。

(アイキャッチ画像提供:茸本朗)

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「いないいないばあ」をするカニ

世界の節足動物の中でも特に反映しているグループであると言われる「カニ」。大きな1対のハサミと丈夫な外骨格に包まれた体を持ち、あらゆる甲殻類が似たような形状に進化する「カーシニゼーション」という仮説も提唱されています。

そんなカニの中で、ちょっと変わった形状に進化を遂げたものがあります。それは「カラッパ」。彼らは丸く盛り上がった甲羅と、三角形に膨れたような特殊なハサミを持っています。

「いないいないばあ」をする恥ずかしがり屋のカニ『カラッパ』を食べてみたカラッパ(提供:茸本朗)

重厚なハサミからは攻撃力の高さを連想しますが、実際には防御に全振りしたような性質のカニです。普段は砂に潜っている上に、捕獲しても挟みかかることはあまりなく、そのハサミで顔を隠してしまいます。その様子はまるでいないいないばあをしているように見え、海外では「Shame faced crab(恥ずかしがり屋のカニ)」と呼ばれています。

その大きな鋏は何のため

彼らは一体なぜこのように巨大なハサミを持っているのでしょうか。

もちろん、大事な顔(頭部)を隠して敵から身を守るという役割はあるものと思われます。しかしそれ以上に、このハサミは「貝殻を割る」ために進化したと考えられています。

「いないいないばあ」をする恥ずかしがり屋のカニ『カラッパ』を食べてみたハサミに「たこ」がある(提供:茸本朗)

彼らの好物は貝類で、見つけると豪快に殻を砕いて食べてしまいます。彼らのハサミには「ペンだこ」のようなものがあり、それを使って硬い殻でも器用に砕くことができるのです。

その味は?

この見た目とおとなしい性質から、カラッパは水族館の人気者となっています。そのため生きている個体が漁獲されると普通は水族館が買い取るのですが、たまに一般消費者も購入することができます。

先日、まさにそのような個体を市場でゲットすることができたので、食べてみました。食べたのはカラッパの中でも最大種で、日本近海に多いヤマトカラッパという種類です。

「いないいないばあ」をする恥ずかしがり屋のカニ『カラッパ』を食べてみたゆでヤマトカラッパ(提供:茸本朗)

ハサミの内側に泥が付着しているので洗い流し、多めの水と日本酒で茹で蟹に。殻を開いてみると、内部にはミソと内子がみっちりと詰まっており、濃厚な味わいが口中に広がります。身の方はややさっぱりした味ですが、ハサミの身はズワイガニのそれのように繊維質で噛みごたえがあります。

全体として、カニ類の中でもかなり上位にある味わいだと感じました。調べてみると「トラフカラッパ」という種が最も美味しいという評価があるので、機会があればそれも食べてみたいものです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>