生き物である以上、大半の魚たちは餌を食べて胃袋に送り、消化・吸収を行って成長していく。だが中には、胃袋が体内に存在しない「無胃魚」というカテゴリーの魚たちがいるのをご存知だろうか。今回は、夏休みの自由研究テーマとして著者が提案したい、無胃魚について触れていこうと思う。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)
目次
釣りの対象に無胃魚がいる!?
生物なら本来は当たり前に持っているはずの内臓、それが胃袋だ。我々が楽しむ釣りもアユの友釣りを除くと、大半は対象魚のエサとなるモノを何らかの形で利用している。当然無胃魚も食事をするのだが、そこには様々な秘密がある。順にみていこう。
無胃魚は腸で消化
無胃魚とは、文字通り「胃」が「無い」魚だ。通常、食べたものは食道を通って胃袋に送られるわけだが、無胃魚の場合は直接腸に送られる。通常の魚は食べ物を消化するまで24時間~36時間程度と言われているが、無胃魚の場合は吸収・消化されるまで僅か30分程度とされている。これは驚異的な消化速度だ。
無胃魚はほぼ休めない
通常の胃袋を持つ魚は、ゆっくり時間を掛けて食べたものを消化するため、エサを摂らずに休む時間がある。対して無胃魚は、食べたものがすぐに消化されてエネルギーに変換されるので、ほぼ休みなく泳ぎながら食べ続けなくてはならない。コイがずっと水面でパクパクしていたり、イワシが口を開けっぱなしで泳ぎ続けているのはこれが理由だ。
釣りの対象となる無胃魚とは
無胃魚として有名なのは、コイや金魚、メダカといった淡水魚の他、ベラ・ブダイの仲間、イワシやサヨリ、トビウオといったところ。このうち釣りの対象になりやすいのは堤防からでもよく釣れる、イワシ、サヨリ、ベラあたりだろう。
イワシやサヨリならサビキ釣り・ウキ釣り、ベラは投げ釣りや探り釣りでよく釣れるので、まずは釣るところから研究を始めてみてほしい。
なぜ「胃」に注目するの?
今回の研究で、「胃」に注目する理由は以下の3つだ。順にみていこう。
魚の生態を詳しく知ろう
アングラーを名乗るなら、よく釣るためにも魚について詳しくなる必要がある。胃袋を取っ掛かりとして、魚の生態を詳しく研究してみよう。
生き物の多様性を知ろう
ある意味「あって当然」であるはずの胃袋が無いというのは、正に「常識が覆る瞬間」ではないだろうか。世界には実に様々な生き物がいるので、無胃魚を始めとした生き物の多様性を知ってみてほしい。きっとその面白さにのめり込んでしまうはずだ。
胃袋が無くても生きていける?
「無胃魚」が存在するという事は、もしかしたら胃袋が無くても生きていけるのだろうか。もし人間に胃袋が無かったらどうなるのか。こんな事を研究テーマにしてみても面白いのではないだろうか。
無胃魚を知るにはどうすればいい?
では、無胃魚を知るために最も重要な項目、「本当に胃袋が無いか調べる」にはどうしたらいいのだろうか。答えは「自分で釣って食べる」ことだ。
まずは釣ろう!
イワシやサヨリ・ベラは、夏から秋にかけて多くの釣り場で狙うことが出来るポピュラーなターゲット。イワシならサビキ釣り、サヨリならシモリ玉を使ったウキ釣りがオススメだ。ベラは堤防の際をオキアミやイソメエサを用いた探り釣りで狙えば、簡単に釣ることが出来る。
スーパーで買うもよし
内臓が美味しい魚として有名なサンマも無胃魚とされている。サンマは内臓にエサが入っていることがほぼ無い為に、しっかり火を通せば内臓ごと食べることが出来るのだ。もしも無胃魚を釣るのが難しい場合は、1匹丸ごと購入して、さばいてみるのもいいだろう。
胃袋がある魚と比べてみる
イワシと同時に釣れるアジは有胃魚(胃袋がきちんとある魚)なので、2種をさばいて内臓を比較してみよう。「アジにはあってイワシにはない部位」がきっと見つかるはずだ。
無胃魚は腸に食べ物が入る
サビキ釣りでイワシを釣ったなら、お腹の中からアミエビが出てくるかもしれない。一見すると「胃の中に食べ物が入っている」ように見えるが、じつはこれは腸なのだ。この事実にも着目してみてほしい。
イラスト&写真と説明を記入
ノートや画用紙・模造紙に魚のイラストや写真を用意し、内臓の構造を記入していこう。その時に感じた事や気づいた事を記入するとさらにグッド。そして「何故彼らは胃袋が無くても生きていけるのか」といった事も研究してみてほしい。
注意点を紹介!
では、どのような事に注意して今回のテーマに挑むべきなのかをみていこう。
命を頂いたらきちんと食べる
一番大切な事は、生き物たちは生きているということ。今回の研究はその命を貰わないと成り立たない研究の為、観察した後は命が無駄にならないよう、きちんと調理して美味しくいただこう。
包丁に注意
胃袋と腸を観察する……ということは、魚をさばくことになる。包丁やハサミなど、刃物の取り扱いには十分注意してほしい。保護者の皆様は、是非すぐ傍で一緒に見守ってあげてほしい。
生臭さに注意
魚をさばいたことがある人なら分かるだろうが、魚の内臓は大変生臭い。今回紹介しているサヨリやイワシは鮮度落ちが速いこともあるので、釣ったその日のうちに観察を行ってほしい。また、魚をさばいたら、手をしっかり洗ってから自由研究の資料に書いていこう。筆記用具や提出物が臭くなってしまっては大変だ。
ちなみに、石鹸で洗っても手のニオイが消えないときは、薄めたレモン汁や酢を利用すると綺麗に消える。これはニオイの原因であるトリメチルアミンという物質とph(ペーハー)に着目した手法だが、こちらを研究の対象としてみても面白いのではないだろうか。
無胃魚を通じて魚の「食」に詳しくなろう
著者は子供の頃からサンマの塩焼きが大好きだが、何故「内臓を食べられる魚とそうでない魚がいるのか」と疑問に思っていた。大人になった今となっては、「サンマの内臓には餌が入っていない(腐食していない)から食べられる」という事実と、クエやマグロ、カツオのように「内臓そのものが美味しい魚がいる」という事を知った。
こういった事をきっかけに、魚や釣りに対する興味がさらに湧いてきて、よりのめり込んでいった結果、今こうして記事を書いている。魚の食性や生態を理解することで、より釣りの腕をアップさせることもできるし、夏休みの自由研究にはもってこいのテーマではないだろうか。釣り好きの小学生のみんなには、是非トライしてみてほしい。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>
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