北海道で近年、水揚げが非常に増えているブリ。美味しい高級魚というイメージのある魚ですが、北海道産のブリの評価はどうなのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
北海道で水揚げが増えるブリ
海洋温暖化が進む日本の近海では、魚の生息域が北上するのに伴い、その地域でこれまで採れてこなかった魚の水揚げが増える事例が多発しています。その中でももっとも有名なもののひとつが「北海道のブリ」でしょう。
ブリはもともと温暖な海を好む魚ですが、ここ数年は北海道周辺に回遊してくることが多くなっており、水揚げが増えています。北海道の魚といえばサケですが、サケを採るために仕掛けた定置網にブリが大量に入ることも珍しくなくなっています。
2020年には1万5000tものブリが北海道で水揚げされており、都道府県別のランキングでは1位。いまやブリは「北海道を代表する魚」といえる状況なのです。
美味しくないと言われる理由は?
それだけブリが水揚げされるようになったのなら、きっと北海道の人も喜んでいるに違いない……と思いきや、意外なことに北海道では、ブリの人気は他の魚と比べてもいまいちです。
もちろんこれまでいなかった魚であるために馴染みがなく、食べ慣れていないというのも理由としてあるかもしれませんが、実際に北海道の人にブリのイメージを聞いてみても「パサパサしてる」「生臭い」といったネガティブな答えが返ってきます。
これは好みの問題もあるでしょうが、それ以上に「本来ブリと呼ばれるべきでないものがブリと呼ばれて流通している」というのが理由だと言われています。
ブランドブリも登場
ブリの名産地である富山などでは、概ね7~8kg以上ある個体をブリとよび、それ以下のものはフクラギなどと呼び分け、ブリとしては流通させません。ブリは出世魚としても有名で、全国的に若魚は別の名前で呼ばれており、味の評価もブリと比べると大きく下がるものです。
しかしこれまでブリのいなかった北海道では、ブリをサイズによって呼び分けるという文化がなかったために、大きいものと小さいものが一緒くたに流通し、結果として品質もピンキリになってしまっているといった状況のようです。
一方で、いくつかの漁協では美味しいブリのみを漁獲し、流通させることでブランド化に成功しています。そのひとつ「らうす船上活〆鰤」は消費地での評価も高く、氷見の寒ブリのような超有名ブランドにも負けない高値で取引されているそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>