もうすぐサンマの美味しい季節がやって来ます。今回は秋の味覚サンマの生態について調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
サンマとは
秋の味覚の代表ともいえるサンマはダツ目サンマ科サンマ属に分類されるサカナです。少し前まではサンマはメダカ目に属していましたが、今はダツ目となっています。
またサンマは秋に獲れることとその形から、「秋刀魚」と書きます。食卓によく並ぶサカナなのに意外と知らないサンマの生態を見ていきましょう。
サンマの生息域
分布域は、北太平洋に広く生息し、日本海を含む日本近海から、アメリカ大陸沿岸のアラスカおよびメキシコまでの海に生息しています。
季節によって広い範囲を回遊する魚として知られるが回遊経路は十分に解明されていません。
以前までは分布群は北西太平洋系群、中央太平洋系群、東部太平洋系群の3系統からなると考えられていましたが、近縁の研究ではこの系群は明確ではないことが分かっています。
寿命は1〜2年
サンマの寿命は意外と短く、1年~2年程度と言われています。28cm未満は0歳魚と考えられ、通常2年で全長35cm程度まで成長しますが、ごくまれに40cmを超える超巨大サンマに成長することもあります。
サンマは大きな群れを作って行動し、動物性プランクトン・甲殻類・小魚・魚の卵などを食べていると考えられています。
サンマは世界中の海に生息していますが、日本近海の群れは、太平洋側では黒潮の暖流域で孵化し、海流とともに北上していきます。
夏季はオホーツク海方面を回遊しながら成長し、成魚になると秋に産卵のために寒流(親潮)に乗って太平洋側では東北、関東沖を通過し、近畿・九州沖までに南下してきます。
サンマの語源
サンマという名前については、細長い魚を意味する狭真魚(サマナ)を語源とする説と、大きな群れを意味する沢魚(サワンマ)を語源とする説など、諸説あります。
サンマは漢字で書くと「秋刀魚」だと思われるかもしれませんが、この漢字になったのは明治末期~大正時代頃であり、古くは「狭真魚」、「青串魚」などと書かれていました。
秋が旬であり、細く銀色の魚体が刀を連想させることから今の漢字に落ち着いたと言われています。
また、熊野、志摩地方、淡路地方などではサイラと呼ばれ、学名を「Cololabis saira」というのは、この地方名に由来しているそうです。実は意外とサンマにも地方名はあり、バンジョウ(佐渡地方)、カド(三重)、サザ・サザイオ(長崎)などと呼ばれていましたが、現代ではその地方名もだいぶ廃れてきていると言われています。
サンマの天敵と回避術
サンマの捕食する生き物でいうと、より大型のサカナであるマグロ類、そして哺乳類のクジラ、海鳥などがその最たる例です。様々な生き物によく捕食されることから、サンマは食物連鎖のなかで重要な役割を担っているとも言われています。
しかし、サンマもそう簡単には捕食されないために、天敵から逃げる際にはトビウオのように水面から飛び出し、海面上を跳ねるように泳ぐこともあるそうです。
もしかしたら今後、サンマも生きるために独自の進化をしていくかもしれません。
サンマ食の歴史
日本を代表する大衆魚ではありますが、庶民がサンマを食べるようになったのは江戸時代中期頃だと言われています。
江戸時代の百科事典である『和漢三才図会』には、サンマについて「魚中の下品(げぼん)なり」という記述があり、サンマは当時庶民の食べ物であり、武士など上流階級の食べ物ではないとされていました。
落語の「目黒のさんま」は、それまでサンマを食べたことのなかったお殿様が、鷹狩りに出かけた先で偶然食べたサンマのおいしさが忘れられずに、滑稽な言動をするという噺(はなし)です。
サンマには胃がない
サンマの体は細長く、くちばしのような口をしているのが特徴ですが、それ以外にもサンマの体には大きな特徴があります。それは「胃が無い」というものです。
短く直行する腸が直接、肛門に繋がるため、摂食した餌は、20分から30分程度の短時間で消化され体外に排出されます。
このようなサカナを『無胃魚』といい、他にもコイやメダカやなども同じように胃がありません。そのため、サンマはハラワタまで食べることが出来るのです。