巨大な二枚貝として知られるシャコガイ。その大きさから「挟まれると死ぬ」なんて言われることもあるこの貝ですが、最近は絶滅の危機にさらされています。
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「オオシャコガイ」の密漁問題
海の生き物に詳しくない人でも知っている巨大貝「シャコガイ」。その中でも最大の種である「オオシャコガイ」の密漁が、いま問題になっています。野生動物の不正取引を調査する組織である野生動物司法委員会によれば、フィリピン当局は2016年以降、13万3000tのオオシャコガイを押収したといい、これは自由の女神像5体分の重さに相当する量だといいます。
このオオシャコガイは、主に貝殻を中国に輸出するために密漁されたと見られています。中国では2017年に、宝飾品の原料として需要の高い象牙の輸入が禁止されましたが、それ以降「象牙に似た素材」の価格が高騰している現状があります。オオシャコガイの貝殻もそのようなものの一つで、中国では宝飾品や彫像の素材として高値で取引されるのだそうです。
またそれ以外にも、飼育用や食用目的でもオオシャコガイの密漁が後を絶たないといいます。(『象牙の代替品需要か 世界最大の貝オオシャコガイ、拡大する闇市場』NATIONAL GEOGRAPHIC 2021.10.15)
オオシャコガイって危険な貝?
オオシャコガイは最大で殻長2m近く、重量200kgを超えることもある、世界最大の二枚貝です。サンゴ礁の間に埋もれるようにして生息しており、足のつくような浅い場所にもよく見られます。
その大きさゆえ「水中で挟まれたら動けなくなり、そのまま溺死してしまう」という伝説が、様々な創作物の中でまことしやかに語られています。しかし実際のところ、オオシャコガイに挟まれて人が死んだという例は記録にないのだそうです。
オオシャコガイはこれほどまでに巨大であるものの、他の二枚貝同様プランクトン食で、魚やほかの貝類、人などを襲って食べるようなことはありません。彼らは体内に緑藻類を共生させ、光合成をさせており、そこからも栄養をもらうので巨大になることができると考えられています。
実は食用としてメジャー
シャコガイの仲間にはこのオオシャコガイの他に、ヒメシャコガイ、ヒレシャコガイ、シラナミガイなど10数種類が知られています。これらの貝はいずれも、生息地周辺では食用にされているようです。
日本でも、沖縄産のヒメシャコガイ、ヒレシャコガイは食材として人気が高く、まれに鮮魚で東京都心にも入荷します。価格が安くないのもあって主に刺身などで食べられており、味はさっぱりとして臭みがなく美味です。
しかしその一方で、シャコガイ類は生息地であるサンゴ礁の減少により、絶滅危惧状態になってしまったところもあります。希少生物の取引を制限するワシントン条約ではシャコガイ類のすべての種が登録されており、世界的には保護の動きが高まっている生き物なのです。
美味しい貝であるシャコガイですが、いつまで食べられるかは我々人類の努力次第だといえるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>