普段目にすることは少ないものの、名前はしばしば耳にするアカマンボウ。実は、誰もが知るあの深海魚と近縁な魚です。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
巨大なアカマンボウが漂着
米西部オレゴン州の海岸にこのほど、重さ約45kgもあるアカマンボウが打ち上げられ、ニュースになっています。
アカマンボウは名前こそしばしば耳にする魚ですが、実は深海魚。生態調査などができず標本数も少ないため、詳しいことはわかっていません。さらに普通は熱帯海域に生息する魚とされており、アメリカ合衆国の海岸で見つかるのは非常にレアな出来事だそうです。
打ち上げられたアカマンボウは地元の水族館、博物館により解剖が行われるということです。(『重さ45キロのアカマンボウが漂着 米海岸』CNN 2021.7.20)
アカマンボウとは
アカマンボウは巨大な円盤状の魚で、後ろ半身と鰭が赤いという非常に独特な見た目をしています。そのシルエットから「マンボウ」の名前がついていますが、マンボウとは異なりはっきりした尾鰭があるなど、違いは多いです。
そんなアカマンボウ、実はマンボウとは近縁でもなんでもありません。マンボウはフグの仲間ですが、アカマンボウはアカマンボウ目という独立したグループに属します。
このアカマンボウ目は、ちょっと意外ですがあのリュウグウノツカイに比較的近縁だと考えられています。細長く、最大で10m近くにもなるというリュウグウノツカイとこのアカマンボウはシルエットこそ全く異なるものの、銀色の体色や赤い鰭など共通する特徴を多く持ち合わせています。
実は身近な食用魚
アカマンボウは分類上は「白身魚」になるのですが、深海の冷水中でも血液の温度を高く保つために、腹部に赤い筋肉が詰まっています。このため、魚類で唯一の恒温動物であるという呼ばれ方をされることも。
その部分は繊維の太い赤身肉で、白い筋が入っています。筋に直交するように包丁を入れると、まるでマグロのような見た目の切り身ができます。
そのためかつては「マグロの代用品」として用いられたと言われています。今では食品偽装になってしまうのでマグロとして販売することはできませんが、「赤まんぼう」「まんだい」といった名前でスーパーに並ぶようになっています。
味の方もなかなか似ており、食感や魚をあまり食べ慣れない人であればマグロと間違えてしまうでしょう。最近はマグロの代わりをさせられなくなったためか、白身肉の部分も販売されているようです。安価で美味しいので見かけたら是非試してみてください。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>