そのコミカルな印象からイラストにされることが多いタコ。ですが、そんなタコのイラストにはしばしば、とある「勘違い」が見受けられます。
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イカそうめんならぬ「タコうどん」
北海道南部に位置する鹿部町。イカ漁が盛んで「イカそうめん」が名物となっている函館市に隣接したこのまちで、とある水産会社が「たこうどん」なる新商品を開発し、話題になっています。
たこうどんの材料は、北日本沿岸に多く生息するミズダコ。これを塩でもみ、ぬめりを除いてから釜ゆでして食べやすく細切りにしたものです。その名前はもちろんイカそうめんにちなんで名付けられたそう。
たこうどんは「生とボイルの中間のような状態」になるよう、茹で時間にこだわっているそうです。どんな料理にでも使えるようにと特に味付けはされておらず、素材の味がそのまま楽しめると人気になっているそうです。
たこうどんは、鹿部町のスーパーや道の駅で販売されるほか、ふるさと納税の返礼品にもなる予定です。(『鹿部町の水産会社が「たこうどん」 地元で親しまれているタコの頭を食べやすく商品化』みんなの経済新聞 2021.4.19)
ミズダコは「頭」もうまい
世界最大のタコであるミズダコ。その足は大人の腕ほどに太くなり、それだけでも十分な肉量があるため足単体で流通する事が多くなっています。
首都圏でも正月の酢だこや、タコしゃぶ用にぶつ切りになった足が売られていますが、それ以外の部位を見かけることはあまりありません。
しかし実際のところ、マダコやイイダコ同様に、ミズダコは「頭」の肉も美味しいです。他のタコと比べると水分が多いため生だと水っぽく感じますが、一度火を通せば柔らかく歯切れのよい食感となり、その強い甘味と合わせて楽しむことができます。
ミズダコの頭は、産地でのみ流通する珍味食材と言えるかもしれません。
タコの頭は「頭」じゃない
さて、先程より便宜上「タコの頭」という表現を用いていますが、実はこれは生物学的に正しいとは言えません。
タコという生物の体は、一般的に「足」と「頭」からなると思われていることが多いようです。しかしより科学的に言えば、移動用の「足」、脳や眼球のある「頭」、内臓が収まっている「胴(腹部)」の3つからなっています。
タコはしばしばコミカルにイラスト化されますが、ねじり鉢巻を巻かれたり、帽子をかぶったりしているあの部分は、実は「胴」にあたります。彼らの体を一直線に伸ばすと、上から胴、頭、足の順番になるのです。足と頭が隣接するため彼らは「頭足類」と呼ばれています。
海底を移動する際、タコは眼球のある頭部を一番高くしています。胴体は重力で後ろに垂れ下がっているので、生きている姿を見ると「なるほど、これは頭ではなく胴だ」と実感しやすくなるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>