伊藤さとしのプライムフィッシング。今年5月にマルキユーから新発売された『コウテン』。その特徴や使用感など、伊藤の感想を交じえながら話を聞いてみよう。
(アイキャッチ画像提供:週刊へらニュース 伊藤さとし)
手水と押し練りとは
前回では千葉県富津市にある戸面原ダムでの実釣をお届けした。釣り方は竿9尺チョウチン両ダンゴ。エサのブレンドはコウテン400㏄+ガッテン200㏄+浅ダナ一本200㏄+水200㏄だった。微調整は小分けしたものを手水と押し練り。当日は魚の活性もある程度高かったようなので、あとはハリスワークのみの対応で釣ることができたと伊藤は話していた。
ところで手水と押し練りとはよく聞くキーワードだが、実際はたったこれだけの作業なのか。かみ砕くなら、手水の量は?押す力は?など疑問点が湧かないだろうか。
押し練りは重さとバラケ方が変化する
「ちょっと待ってよ。それを数値化しろってのは酷な話だよ(笑)。だってそれぞれはその時どきの対応であって、ちょっとでもウキの動きが異なれば量も圧力も変わってくるだろうからね」
まあ確かにそうですが、何か目安みたいなものはないでしょうか?
「それを言うなら、押し練りがどういうものであって、それをやるとどういう効果がもたらせるかを先に理解したほうがいいだろうね」
なるほど確かにそうですね。さすが理論派の伊藤さん(笑)
「まず押し練りとは、たんに麸に圧をかけるだけの作業であって、練り潰したりはしない。つまり麸の中に含まれるエアを抜いて、麸同士を密着させる作業だということは理解できるよね」
はい。その効果はどんなものですか?
「さまざまな効果があるけど、もっとも顕著なのは丸めたエサの比重がアップするよね」
それは理解できます。性質が同じで中に空気を含んでいるかいないかだったら、含まないほうが沈みが速い。それに麸の密着性が増したのだから、押す前と比較すれば開きにくくもなるでしょう。
「まあこの他にも、押すと押さないとではエサ表面の滑らかさも変化するから、それによるバラケ方の違いなどもある。だけど大きくは、重さとバラケ方が変化すると理解すればいいよ」
手水はエサの性質が大きく変わる
では手水はどうでしょうか?分量によって、かなりエサの性質が変わってしまうと思いますが。
「そうなんだよね。押すという作業よりも、こっちのほうがよほどエサの性格を変えてしまうと言ってもいい。だから手水を打つ時は、少量ずつというのが絶対条件なんだよね」
私も経験がありますよ。手水を打ち過ぎたことでタッチが軟らかくなり過ぎてしまい、それを補正するのに麸材を足して補ったら、硬さは元に戻ったけど性格の異なるエサになってしまい、アタリが出にくくなってしまったことが。
「そうそう、あとは軟タッチになり過ぎてエサが持たなくなってしまうとかね」
ゆえに水分を増量する場合は慎重さが求められるわけですね。
「そういうこと。だから手水と押し練りはセットではなく個々に独立した作業であって、必ずしも同時進行ではないってことなんだよね。ここのところは誤解されやすい部分だから、とくに注意してほしいね」
必要なら手水。必要なら押し練り。そしてさらに必要なら手水と押し練り、となるわけですね。
コウテンは練り込まなくてよい
「そのとおり。ちなみに、『コウテン』をベースにしたブレンドエサでは押し練りが基本で、グリグリと練り潰すような練り込みは、あまりやらないほうがいい。やってはダメとは言わないけど、練るのは押す作業までに留めたほうが『コウテン』の特徴を生かせるエサに仕上がりやすいはずだよ。もちろん必要なら、グリグリ練り込んでもいいけどね」
なぜ練り潰すようなことはしないのですか?
「そこまでしなくとも、通常はエサが持つはずなんだよね。『コウテン』とはそういうベースエサだからね。それが持たないということは、ブレンドした銘柄が合っていないか、セッティングのミスマッチが考えられる」
となると『コウテン』の性質を理解する必要がありそうですね。ではそのへんのことは次回から教えていただきましょう。
次回も「コウテンで好転させよう」です。
<週刊へらニュース 伊藤さとし/TSURINEWS編>
戸面原ダム