外出の自粛が続いており、そろそろ釣りの虫がムズムズ騒ぎ出すころではないだろうか?そこで今回は家にいながら釣り気分が楽しめる書籍を紹介したいと思う。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
読書で釣り気分
三密とは無縁のはずだが、新型コロナウイルスの影響で釣りも自粛ムードが漂う。テレビをつけてもコロナ報道ばかりで気が滅入る。たまにコロナ報道以外の番組があっても、再放送ばかり。それでもテレビをつけて仕掛け作り、道具のメンテナンスをする日々である。
外出の自粛というと思い浮かぶのが読書。感想文の提出という課題もあり、釣りの本を数冊読んだのは、私の場合謹慎中のことである。勉強嫌い、本嫌いの私でも、釣りの本なら読む気になった。そこで面白い釣り人にお勧めの随筆をご紹介したい。
日本の書物
『私の釣魚大全』や『フィッシュオン』といった、開高健の作品を読むと、アブのリールを撫でまわしたくなる。代表作の『オーパ』はアマゾンにトリップできるし、海派には『海よ、巨大な怪物よ』という迫力満点の写真をちりばめた本もある。
開高健を読めば井伏鱒二、佐藤垢石も忘れてはいけない。名前を聞いただけで緑の川が見えてくる。幸田露伴、竹内始萬、山本素石、緒方昇も読みたくなってくる。
ほかに林房雄、室生朝子、西園寺公一、福田蘭堂と文豪は皆釣りが好きだったと思っていたが、自分が釣りをする作家しか知らないだけだった。
詩集も多い。特に緒方昇は緒方魚佛の名前で本紙にもエッセイが連載されていた。魚佛詩集などインドアフィッシングには最適で、磯や水平線が目に浮かぶ。
ちなみに、この時代には長さの単位も異なるらしい。本サイトでは1ヒロが150cmとしているが、昔は1ヒロが180cm。海図でもヒロは180cmだった。サオの長さは尺とともに間(けん)が使われ、1間は180cm。
海外の書物
外国では、釣り師のバイブルと呼ばれた、ウォルトンの『釣魚大全』。ハウツー書でもあり、詩でもあり、エッセイでもある。淡水の釣りが舞台ながら、海派の人が読んでも楽しい。
そして、ヘミングウェイ。短編が多いので読みやすい。『青い海にて』の中の、「メキシコ湾流は未踏の世界で釣り人たちがこれまで踏み入ったのはほんの縁に過ぎない……」という文などは、ロマンに満ち溢れ、海を女性のように想っている。
魚の名前で変な誤訳もある。ドルフィンフィッシュをシイラでなくイルカと訳していたり、マーリンをマカジキと訳したりしている。湖も川釣りも随筆がある。
モーパッサンも釣りの短編を書いている。『ふたりのとも』という短編は、ドイツとフランスの戦争中に職を奪われた釣り人が最前線へ釣りに行く話で、「パリは包囲され飢餓で瀕死にあえいでいた。」という書き出しで始まる。なんとなく今のコロナ禍の釣行に似ている。12頁くらいの短編なのが読みやすい。この話の結末は少し恐ろしい。釣行はコロナの後にしよう。
戦時中の釣りといえば、ヘミングウェイも前線で瀕死の重傷を負った時の夢の体験を『身を横たえて』で書いている。ヒューコプリー、ピーターベンチリー、モーリスウィギン、ヘンリーウイリアムソンも釣り随筆を書いている。
昔のつりニュース本紙
昔のつりニュース本紙を読み返すのも楽しい。今から36年前1984年の釣況欄をみながら、この船も永いしこの人も長いとか感傷に浸っている。また道具の進歩も良くわかる。
とにかくコロナは車か石油ストーブ、ビールだけにしてほしいものだ。
<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>