サカナ界のアイドル「カクレクマノミ」。彼らはいつもフカフカなイソギンチャクの上で生活を送っています。そんな切っても切れない関係を共生といいます。今回はこの共生について調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
カクレクマノミとは
カクレクマノミは、スズキ目スズメダイ科クマノミ亜科に属する海水魚の一種で、アニメ映画の主役になったことで一躍有名になりました。オレンジ色の体に白いラインが美しく、大きさも10㎝程度のため、観賞魚として高い人気があります。
カクレクマノミをはじめとするクマノミの仲間は、一生のうちの大半をイソギンチャクのすぐ近くで過ごすため、イソギンチャクとは切っても切れない関係にあります。
では今度はイソギンチャクの特徴を見ていきましょう。
イソギンチャクとは
イソギンチャクは、刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目に属する無脊椎動物の総称です。見た目はまるで植物のようですが、触手を沢山持っており、刺胞動物に分類されているのでクラゲやサンゴの仲間になります。
口の周りのひらひらとした部分は柔らかそうで触りたくなってしまいそうですが、実はその触手には毒があります。触手の先端に刺胞と呼ばれるものが無数にあり、その針と毒で身を守っています。美しい見た目とは裏腹に、中には強力な毒による死亡例もあるほどです。
美しい花にはトゲがあるとは言いますが、美しいイソギンチャクには毒があると覚えておきましょう。
どうしてカクレクマノミは平気なのか
イソギンチャクの非常に強力な毒を前に、どうしてカクレクマノミは平気な顔をして触手のベッドで生活が送れるのでしょうか。
本来、イソギンチャクの触手には無数の「刺胞」と呼ばれる毒の入ったカプセルを魚などに打ち込むことで毒を与えます。
しかし、最近になってカクレクマノミを含むクマノミ類の体表を覆う粘液の化学組成がイソギンチャク類の粘液の化学組成に似ていることが分かりました。
これにより、イソギンチャクはクマノミ類を外敵とは認識せず、刺胞を発射しません。他のサカナがイソギンチャクに触れることができないなか、クマノミ類だけが平気な顔をして生活を送れるのです。
それぞれのメリット
クマノミ類はイソギンチャクのまわりに自分の縄張りを持ちます。
イソギンチャクに住むことで、自分よりも大きい肉食の魚が近付いてきたときにイソギンチャクの中に隠れて身を守ります。
また、イソギンチャクを食べようと近づいてくる魚も自分の縄張りに侵入してきた敵と判断しクマノミが追っ払ってくれます。
クマノミを住ませることでイソギンチャクも守られているのです。
食事においてもそれぞれにメリットがあります。
クマノミは大きなエサを見つけた場合は、一度に食べきらず口にくわえてイソギンチャクの触手の間に備蓄します。するとイソギンチャクはそのエサを家賃のように自分のエサとします。
クマノミはイソギンチャクに身を守ってもらい、イソギンチャクは敵を追っ払ってもらったり、エサの一部をもらったりして一緒に生きていくのです。これを【相利共生】と言います。
サカナは相利共生するものが多い
皆さんの中には、大きなサカナが体をエビや小魚に掃除されている姿を見たことがありませんか?
まさにあれも相利共生です。
大きなサカナは小魚やエビに掃除させるによって不快感を取り除いたり、寄生虫を食べさせて健康を維持しています。
一方の小魚やエビたちはしっかりと食物を確保できるので、一緒に生活を送ることで双方に大きなメリットがあります。
また、共生という言葉でイメージするものに水族館で人気のジンベイザメとコバンザメがいるかもしれませんが、あれは相利共生ではないと言われています。
コバンザメにとっては体を運んでもらえる、エサのおこぼれがいただける、など大きなメリットがありますが、ジンベエザメにとってはコバンザメをくっつけていることによって、あまり大きなメリットはありません。
このように片方にのみメリットがある関係を【片利共生】と言います。
一緒に生活を送っている生き物がいたときはその関係が【相利共生】なのか【片利共生】なのかを考えてみると面白いかもしれませんね。
<近藤 俊/サカナ研究所>