伊豆諸島の八丈島が発祥とされている「島寿司」について調べてみました。唐辛子醤油につけたネタがとても美味しいお寿司ですが、一般的なお寿司では当たり前に入っているワサビを使わない事が多いなど、ちょっと変わった点も。
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島寿司とは
島寿司というのは、主に伊豆諸島の八丈島やその近隣の島で食べられている郷土料理のお寿司のことを指します。唐辛子醤油につけた魚の切り身の表面がつややかなべっこう色をしていることから「べっこう寿司」や「べっこう」とも呼ばれています。
一般的なお寿司との違い
島寿司と本州で食べるお寿司を比較すると、大きく違う点が3つあります。
1.ネタ
俗に言う「ヅケ」と呼ばれる醤油漬けにした魚をネタにしています。
ネタに使われる魚は、メダイ、キンメダイ、ハマトビウオ、シマアジ、カンパチ、キハダマグロ、カツオなど、水揚げされる時期によってネタが変わります。
日持ちを良くするために、濃い目に調理されていることが特徴です。
2.シャリ
本州で食べるお寿司に比べて、酢飯の味付けが甘めになっています。甘酢生姜や島のりを混ぜた酢飯に魚を乗せて、ちらし寿司風に作ることもあるようです。
3.山葵ではなく「芥子(カラシ)」
お寿司といえば、シャリとネタの間に普通はワサビが入っていますが、島寿司には、芥子(カラシ)が使われています。
伊豆諸島や小笠原諸島では、かつては山葵(ワサビ)が自由に手に入らなかったため、代わりに練りがらしが使われています。
発祥の地は八丈島?
島寿司の発祥は伊豆諸島の八丈島だとされています。
しかし、その歴史については詳しい書物なども残っておらず、いつ頃、だれが、どのように作り出したのかは、今もなお知られていません。
八丈島から、さらに南にある小笠原諸島にも、同じように島寿司があり、こちらは、明治の頃に八丈島から伝えられたと言う文献が存在するため、「島寿司」が明治以前から八丈島に定着していることが分かっています。
発祥の時代背景
明治以降に「島寿司」という食文化が八丈島を中心に伊豆諸島から各地に広がりました。
温暖な伊豆諸島では、新鮮な状態でサカナを長期保存することが難しかったため、醤油に青唐辛子を入れて殺菌効果を高めて、少しでも日持ちするように工夫されました。
離島という環境だからこそ生まれた保存食という側面もあります。醤油や調味料のバランスは家庭やお店により異なるので、代々受け継がれた味を楽しむことができます。
エリア別の特性
一言で島寿司と言っても、エリアによって様々な特徴があるようです。
八丈島
本場の八丈島では水揚げされる白身のサカナを中心に島寿司が作られます。
近海でよくとれるハチビキという魚や、メダイ、カンパチなどがよくネタとして使われます。
島寿司をお店で注文すると、様々なサカナのネタと共に『岩海苔の握り』が並んでいるのも特徴の一つです。
伊豆大島
伊豆大島では、漬け込むタレの醤油に「青とう」と呼ばれる辛味の強い青唐辛子を加えた「島唐辛子醤油」を使うことが特徴です。また、酢飯の甘みはさほど強くなく、練りがらしも使いません。
他のものより辛味が強いので、少し大人な味に仕上がっています。ネタに使用されるサカナには「サワラ」が使われることが多いです。
小笠原諸島
島寿司は、今や「小笠原の郷土料理は?」と言う問いに、恐らく尋ねられた島内の人の殆どがその名を挙げるほど、島の代表的な郷土料理となっています。
八丈島の島寿司に比べて、こちらも辛めの味付けが特徴です。
大東諸島
八丈島から1100km余り南西にある大東諸島にも島寿司があり、大東寿司と呼ばれています。こちらでは反対にカラシではなく、ワサビを使用しています。しっかりと漬けるのではなく、浅漬けなのことも特徴です。