水産会社勤務のプロが教える「おいしい旬魚」の見分け方:『サンマ』

水産会社勤務のプロが教える「おいしい旬魚」の見分け方:『サンマ』

サンマは「秋刀魚」と書くように、秋に旬を迎える魚。今年もそろそろ鮮魚店やスーパーに並ぶ季節である。そこで今回は、おいしいサンマの見分け方を、奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が紹介します。

(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)

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サンマの生態

サンマはダツ科の魚で、同じダツ科にはトビウオやメダカなどがいる。分類的には今鑑賞ブームのメダカに近い魚である(寿命や産卵特性も似ている)。

サンマは大阪湾でも初夏に回遊することがあり、サビキ仕掛けで釣れる。20年くらい前に泉大津や神戸港でも釣れたこともある(記憶が薄い)。ただし小型で脂もないので、本場は北海道だろう。

サンマは今年も不漁予測

水産会社勤務のプロが教える「おいしい旬魚」の見分け方:『サンマ』今年は不漁?(出典:pixabay)

喉元過ぎれば熱さを忘れるように暑さもマシになって中秋を迎えたが、この暑さがサンマには不都合のようで8月にスタートしたサンマ棒受け船の漁模様は、ほとんど水揚げがなかった。ようやく22日に根室に上がったサンマが関西で売られたが、やはり高値となった。

今年2019年は日本近海の漁場に回遊するサンマの量が、去年よりさらに少ないと、国立研究開発法人「水産研究・教育機構」がまとめた。サンマの不漁が続く見通しで、もう1匹100円で食べられないかもしれない。

前年(145万トン)より33%少ない97万トンと推定され、調査を始めた2003年以降で2番目に低い水準となった。鮮魚として売られる主力の1歳魚の割合が少なく、身も小ぶりだという。

サンマの目利き

ではまずはどんなサンマを選んだらいいのかをレクチャーしたい。

パックで売られている生サンマ

水産会社勤務のプロが教える「おいしい旬魚」の見分け方:『サンマ』パックされたサンマ(提供:WEBライター・有吉紀朗)

パックで売られている生サンマは、小顔で頭から背中にかけて盛り上がり、厚みのあるものががより脂が乗っている。普通サンマは箱詰めされるときにサイズごとに分けられる。重さでコンピューター選別されるので、ほぼ同じような魚体がそろう。しかし、中にはあきらかにグラマーと思うサンマが交じっている。

そして、魚は内臓から悪くなるので、お腹が硬いサンマのほうが新鮮。優しく押さえてみて軟らかいものは避ける。また、プランクトンフィーダーなのでお腹が破れたりするころには鮮度はかなり悪いと覚えておこう。

目の周りが濁っておらず、透明で澄んでいることも重要。産地からは氷塩水で送られてくるが、この塩水も管理されて目が濁るような濃い塩水にはしない。

そして、下顎の先端の色を確認しよう。サンマは海で泳いでいるときは口先が黄色く、下顎の先端がサンマの鮮度を表すバロメーターとなる。鮮度が落ちてくると下顎の先端が『黄色』から『茶色』に変化する。だいたい水揚げから4、5日くらい経つと色がかわってくる。

箱でバラ売りされている場合

しっぽを持ったとき、刀のようにまっすぐに立つサンマがいい。魚が硬いのは鮮度の証明だ。

値段で買うのも一つの手だ。同じ日に100円で売られているサンマと200円で売られているサンマがあれば、倍の値段?と思わずに高い方を買う。例えばトラック便と航空便といった輸送コストの差であったりする。

そして、塩水が綺麗なもの。産地からは塩水氷で店頭に到着する。殺菌塩水氷を使うメーカーも多いが、これが日にちが経つほどサンマから出る血液で赤黒くなってくる。店頭に並べる直前に入れかえる場合もあるが、水の変色は早い。

サンマに付いている寄生虫

写真に写っているのはサンマヒジキムシで、食べても無害だ。この虫が付いているサンマと付いてないサンマを食べ比べても味は同じだった。サンマに穴状の傷があればこの虫を取った跡とみていい。

厄介な寄生虫がアニサキス。加熱調理の場合問題はないが、刺し身やタタキで食べるときに注意がいる。切る時に取り除くか一度冷凍する。また内臓の生食はアニサキスがいる確率が高い。

水産会社勤務のプロが教える「おいしい旬魚」の見分け方:『サンマ』サンマヒジキムシ(提供:WEBライター・有吉紀朗)

はらわたも美味

「サンマ苦いか塩っぱいか」これはたしか佐藤春夫が人妻に恋して破れた?時の詩だったような気がする。塩焼サンマを丸ごと1匹食べる度に思い出す。はらわたは独特の苦みと甘みがありおいしい。だが好き嫌いもあり、特に子供や女性は苦手なのか、サンマの頭取という調理の依頼が多い。別に嫌いだったら構わないので食べなくていい。無理やり食べて魚がすべて嫌いになる可能性もあるので。

我が家では、漫画「ドカベン」の中で岩鬼選手がいつも丸ごとサンマを食べるので、長男は頭から丸ごと、長女や奥様はお腹や頭取と分けている(残った頭やワタはタチウオ釣りのまきエサに)。

不漁でも安く買えるサンマ

最後に、こういう不漁の年に安くサンマを食べる方法を紹介しよう。それは、解凍サンマ、塩サンマや開きサンマを買うという手だ。

解凍サンマは文字通り解凍したサンマで、1年中買うことができる。選び方は生サンマと同じ。塩サンマもほぼ1年中流通している。塩をして冷凍されているので、新物が高くても塩サンマは前年のものがあるから安く買える場合が多く、普通脂の乗りがいい期間のサンマを塩にしているので、はしりや終盤のサンマより脂が乗っていることが多い。塩焼きにはオススメ。ただし写真のような黄色いものは脂が回っているので買わない方がいい。

水産会社勤務のプロが教える「おいしい旬魚」の見分け方:『サンマ』黄色いものは避けよう(提供:WEBライター・有吉紀朗)

関西では開きのサンマは和歌山雑賀﨑の灰干しサンマや明石のサンマがおいしい(ただし原料は北海道や三陸のサンマ)。両地ともやはり加工技術が優れている。この他、南紀名物のなれずしは乳酸菌の生成を応用したもので、保存もできておいしい。

水産会社勤務のプロが教える「おいしい旬魚」の見分け方:『サンマ』加工されたサンマも狙い目(提供:WEBライター・有吉紀朗)

<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>