釣りをしていると時々間違って掛かってくるアメフラシをご存じだろうか。一見、茶色くてグニューとした感触が好き嫌いの分かれ目になるかもしれないが、このよく知られたアメフラシに近い仲間がウミウシ(海牛)の一群だ。今回はそのウミウシの魅力をほんの少し紹介してみよう。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)
漢字では「海牛」
ウミウシは漢字では「海牛」と書き、海に住む牛のような形を彷彿される生き物だ。生物学的には軟体動物門腹足綱に属する一群で、言わば巻き貝の仲間である。世界中で約3000種が知られており、国内でも500種以上がいるバラエティーに富んだ生き物の仲間だ。
形態学的に言うと、巻き貝の殻がどんどん退化していって、ほとんど目視できないくらいになっているものや、極端な例ではまったくなくなっている種類もある。基本的にウミウシと言うのは、学術的に言うと、決まった1群ではなく、それぞれの特徴から見ても分類が分かれる種類なのである。
貝の名前が付いている種類が多い
で、面白いのはその名前。ウミウシとひと口で言えば、牛の角のような触角が生えているイメージが強いが、実は巻き貝の仲間なので、「○○ガイ」「○○カイ」といった、貝の名前が付いている物が多い。
もちろん、カラフルで珊瑚礁などの映像で時々映る、アオウミウシやシロウミウシなど、ウミウシと名が付くものが多いが、ミドリガイやベニシボリガイ、ミズガイなど一見、貝かと思うような名前があったり、キセワタ、ウミコチョウ、アメフラシにウミフクロウ、ナギサノツユなんて、名前からはどんな生き物なのか想像もできないような種類もあって、これはこれでいろいろと専門書などを読んでいると止められない面白さなのである。
以前、視聴者からの依頼を出演者が解決していく某テレビ番組で、「柑橘系のニオイがする海の生き物」として、紹介されたメリベウミウシなどもウミウシの仲間である。実際に筆者がメリベウミウシを見つけて手に取り、ニオイを嗅いでみたところ、本当に柑橘系のニオイがした。
実は大阪湾にも多く生息
少し知っている方なら、カラフルなウミウシの仲間って南方系で、南の海など珊瑚礁域に多い生き物であると思われている人もいるだろう。ほぼ正解なのだが、実は大阪湾などにもかなりの種類のウミウシの仲間が生息する。
先日も和歌山・加太や大阪・岸和田の干潟(岩場や岩がたくさんあるエリア)で観察会を行っていたので参加してみると、意外や意外、岸和田の干潟でも10種類近くのウミウシが見つかった。加太ではさらに多く30種類近くも見つかったのだから驚きだ。
ちなみに採取はとても簡単で、磯や干潟などで干潮時に現れるタイドプール(水たまり)で見つけることができる。岩の側面などをじっくり観察し、岩に生えている海藻をかき分けるとすぐに見つけることができるだろう。ウミウシ観察会を実施した干潟(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)
ウミウシは慣れると採集は簡単なのだが、飼育が難しく、長期間飼育できない事が多い。そんな理由で、あまり水族館などでも見かけないのである。
ウミウシ専門のミニ水族館
さて、和歌山・加太や大阪・岸和田の干潟など身近に種類がたくさんいるのに、ほとんど見た事もないウミウシってどんな生き物なの?と言う人に朗報を一つ。
そんなウミウシだけを展示している小さな水族館スペースが、大阪市港区にある海遊館…ではなく、その手前にあるショッピングモール「天保山マーケットプレース」の3階にある、海遊館サテライトギャラリー「ウミウシminimini水族館」だ。
ショッピングセンターや飲食店の入っている建物の中に小さな水槽が20個ほど。その中には常時30種類ほどのウミウシが展示されている。
前述のように飼育が難しいので、常に補充をしながらの展示で、新しい種類のウミウシが展示されると、facebookなどでも常に情報を公開しているのでそちらもご参考に!
この夏、子どもさんたちと一緒に、どっぷりとウミウシの世界にハマってみるのもいいかもね!
<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>