魚の中には「赤魚」と呼ばれるものが少なくありません。標準和名から地方名まで、いったいどんなものがあるのでしょうか。
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キジハタよりも「アコウ」
我が国ではその価値が「西高東低」の魚がたくさんありますが、その代表的なものがキジハタです。小型のハタですが身の味がとても良く、夏場に旬を迎えることから関西以西では「夏のフグ」と呼ばれて珍重されています。
キジハタ(提供:PhotoAC)そんなキジハタですが、メインの消費地である西日本で「キジハタ」と呼ばれることはまずありません。ほとんどの地域で「アコウ」と呼ばれています。
キジハタは赤茶色の地にオレンジの斑点が入った特徴的な見た目で、特に生きているときは赤っぽさが鮮やかです。アコウとは「赤魚」がなまった呼び名という説があり、もしそうであればあまたある赤っぽい魚の中でも特に美味しいことからこの名前で流通したと思われます。
アコウダイ?赤魚?
さて、キジハタの「アコウ」は地方名ですが、標準和名が「アコウ」の魚がいます。それはアコウダイ。
アコウダイ(提供:PhotoAC)アコウダイはやや深い海に生息するカサゴの仲間で、びっくりするほど赤い体色が特徴です。この赤さゆえにアカウオと呼ばれ、それがなまってアコウに、更に祝いの席にも使われるほど大きくて立派な体型から「タイ」がついてアコウダイという名前になったと考えられています。
ちなみに近縁種でそっくりな見た目をしたアラスカメヌケという魚は「赤魚」という名前で我が国でも広く流通しています。ある意味「名前の先祖返り」と言えるかもしれません。
南の島の「アカナー」
南の島にも「赤い魚」と呼ばれるものがいます。それがバラフエダイ。名前のとおりバラみたいに鮮やかな朱色の体色からこのように名付けられています。
バラフエダイ(提供:PhotoAC)この魚は沖縄県各地で「アカナ」もしくは「アカナー」と呼ばれています。当地では魚のことを「ナ、ナー」と呼ぶことが多く、アカナーもまた赤魚という意味になります。
ちなみにこのアカナー、美味な魚である一方で地域によっては強いシガテラ毒を帯びることが知られており、後者では「毒々しい赤さ」という捉え方もあるようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

