今年も春がやってくる。雪化粧の山々に日ごとに茶の色が増してきて、野山のあちこちが白やピンクに彩られる。薄桃色の桜がまぶしい新緑に代わるころには、流れの中は全盛期を迎え、渓魚たちは腹いっぱいにエサを食(は)む。そんな季節はもうすぐだ。仕掛けを結ぶ手を休めてしばしお付き合い願いたい。
ポイントの選び方
手っ取り早く大物の釣果を出したいなら、絶対に外せないのが成魚放流のある河川でサオを出すことだ。成魚の放流事業から撤退する漁協が絶えない昨今だが、あなたがビギナーで狙いが尺クラスなら、これは必須の条件だ。放流日に大半を釣られてしまうのも事実だが、釣り人からもカワウからも逃げ果せる個体が相当数いるはず。
22~23cm程度で放流された個体でも夏には尺に届き、見事なプロポーションに変貌し私たちを楽しませてくれる。まずはこのことを頭に入れてこの先を読み進めてもらいたい
流れの変化を狙え
これから本流を釣ってみようと考える諸兄の大半は、渓でのアマゴ、イワナ釣りを経験しているものと思う。
渓のどこが魚が濃いのか、どこでエサを待っているかを思い浮かべてほしい。落ち込みの脇の巻きや、石裏の反転流、瀬の肩…。季節、水況によってそれぞれいい思いをしたポイントを覚えているはず。これらは、「流れが変化している」と言う点において共通だ。
場所が本流になっても魚の居場所は基本的に同じ、流れの変化する場所である。
しかし、豊富な水量とどこから手を付けたらいいか皆目見当がつかない広さに圧倒され、判断に迷ったあげく、アタリの欠片(かけら)もないままに本流を諦めてしまうのが本流ビギナーによくあるストーリーだ。
ポイント絞り込み方
川に立ったらまずは流れを変える障害物を探してみよう。
沈み石やカーブした流れの内側、淵尻のカケアガリなど、自然な変化はもちろん、橋脚、テトラ、護岸などの人口建造物も流れを変化させる原因になっている。
これらは水生昆虫を増殖させ、小魚を育み、大アマゴに栄養と住処(すみか)を提供する。この生態系の縮図は食物連鎖の観点からしても立派に成立しており、ポイント選びの重要なヒントとなっていることを理解してほしい。
これに、季節や水量に応じた渓魚の行動パターンを加味すれば、サオを出すべきポイントが見えてくる。
魚の習性も考えるべし
天敵である鳥からは、深みに潜るか岩に張り着くかで逃げるはず。水量が増えればテトラや橋脚などの流れの緩む場所に移るだろうし、水生昆虫が羽化する時期は流下する虫が獲りやすい瀬の肩でエサを摂(と)るはずだ。
まだ水も冷たい春先は、日中陽の当たる緩流で流れてくる虫類をノンビリ食むのを目にするし、水温が上がる夏場なら、朝夕マヅメのひと時にエサをあさり、日中は水底深く身を潜める。
魚は常に動いていることを忘れずに。いくら有名ポイントに一番で入川できたとしても、やみくもにサオを振るだけでは本流の渓魚は相手をしてくれない。ヤツらはいつも都合のいい場所に移動しながらエサを摂り、休み、生活しているのだ。
「流れの変化と魚の習性」自分の釣りの組み立てにこの点を必ずインプットしておくことがポイント選びでは肝要だ。これらを考えながら流れに対峙すれば必ず道は拓けるはずである。