寒波で雪がちらつく厳寒の2月23日、和歌山県の水軒一文字にチヌ(クロダイ)狙いで落とし込み釣りに挑み、幸いにもチヌ35cmを手中にした。今回はその模様をお伝えしよう。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)
内側の壁に岩カニを落とし込み
朝6:30前に夜が明けた頃には雪が止み、陽射しを感じる釣りやすい状況に転じた。海水は澄み、風も波気もないに等しいという点では好材料だが、当日は若潮で潮の干満の差は昼12時まで殆どないのが不安材料だ。

指先だけ出した手袋を着けて岩カニを針に刺し、落とし込み釣りをスタートする。旧波止は2,000m以上長大で全域を探り歩くのは現実的ではないので、今回は5番の船着き場から200mほど南方向に下がった所をスタート地点として、7番の船着き場に向けて歩を進め、内側の壁を探り歩くことにした。

35cmのチヌがヒット
冬場で海水温の低い時期は、チヌは盛期のように海面近くに浮いてヒラを打つ状況は考えにくく、タナは壁際の海底と決まっている。旧波止内側の海底は約6m。目印仕掛けが見える範囲ではヒットして来ないので、竿先のわずかな感覚で海底を着実に捉えてチヌのいる所に岩カニを送り込むことが必要だ。
最初のアタリは小さく、上がってきたのはエサ取りのフグ。しかしフグでも魚の活性はあると前向きに理解して歩を進める。

7:20頃、5番の船着き場近くで、海底に着底した岩カニを竿先の小さな操作で剥がしてサソイをかけたことがドンピシャで功を奏し、ストライプラインがスッと引き込まれ、向こう合わせのような形で魚が針掛かりした。
強い引きでチヌかカンダイかの二択を確信した。壁際から引き離し、無理せず海面まで魚を浮かせる慎重なロッドワークを心掛けると、海面に銀色の綺麗な魚体が姿を覗かせた。空気を吸わせて動きを止め、タモ入れに成功。周りに誰もいない波止上で「嬉しい!」と声をあげた。

7番の船着き場付近の荷物置き場に戻って検寸すると35cm。魚が弱らないうちにとストリンガーに吊るした。

旧波止のの穴釣りは今一つ
旧波止に渡った他の釣り人は、消波ブロックの穴釣りで底物を狙っていた。良型メバル、ガシラに加え、上手くいけばアコウにも出会えるとあって、冬季の知る人ぞ知る釣り方になっているが、様子を聞くと「アタリはあるんですけどね」と、今一つの状況。

チヌを釣った喜びを露にするのは控えめにして、岩カニの保温のケアと、落とし込み釣り再開の準備にとりかかった。
追釣ならず納竿
新たに活きの良い岩カニを小分けして、落とし込み釣りを再開した。先ほど釣った海底でのサソイを組み入れて、2匹目の獲物を狙ったが、確証のあるアタリはなく、7番より少し手前の場所にたどり着いた時点でタイムアウト。
潮が殆ど動かない日なので、納竿を遅らせても釣果は伸ばせないだろうと判断して釣りを終え、10:30の迎え便で波止を後にした。最終釣果は追釣なく35cmのチヌ1匹に終わった。
新波止の釣り人は絶好調の模様
迎え便の同船者は平鯵狙いで新波止に渡っていた常連のようで、船着き場に戻ってからのおかみさんへの報告では、二桁釣果と良型のバラシがあったとのこと。
夕方に水軒渡船のホームページの釣果情報を見ると、30cmオーバーのサイズも混じる平鰺の二桁釣果が多数掲載されており、新波止の釣り人は絶好調の模様だった。また、チヌ落とし込み釣りの常連も当日は新波止に渡っていて、5匹のチヌを仕留めていた。
私は貴重な1匹のチヌを持ち帰り、夕食で塩焼きにして賞味したが、その味は釣り人あるあるの思い出補正もあって、平鯵に負けない絶品の味に思えた。

<伴野慶幸/TSURINEWSライター>