我が国では魚を好んで食べますが「魚を食べる生き物」についてはそうでもありません。いったいなぜなのでしょう?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
魚を食べる鳥は不味い?
ここ数年、漁業に大きな被害をもたらしている「害鳥」がいることをご存知でしょうか。それはカワウ。
海面から内水面に至るまで様々な水域に飛来し、養殖された魚や放流された魚を次々に食べてしまいます。そのため各地で駆除が行われており、野鳥のなかではかなり多く捕獲されている状況が続いています。
日本には肉食がタブーとされてきた歴史がありますが、そんな時代にも野鳥の肉は食べられてきており、野鳥食を好む国民といえます。したがってカワウも食用にされているのかと思いきや、狩猟者の自家消費も含めてほとんど食用にされることはないようです。
このカワウと同様に「魚を食べる狩猟可能鳥」はキンクロハジロ、ホシハジロなどを含めいくつかいますが、その全てが同様に食用にされていません。
魚を食べる哺乳類は個性的なお味
筆者はかねてから魚食性の鳥がなぜ食べられないか気になっており、食べて確認してみようと思ってこれらの鳥の狩猟に帯同したことがあります。いただいたものを調理して食べてみると、いずれも独特の匂いがあり、人を選ぶ味わいであると感じました。
そしてその際に思ったのは「なるほど、哺乳類と同じだな」ということ。哺乳類でもイルカやツチクジラなどのハクジラ類、あるいはトドといった魚食性の種の肉はかなり独特の風味があり、万人ウケする味とは言えません。
人を選ぶ味のワケは?
いったいなぜ「魚を食べる動物は食べづらい」のか、それは脂の成分に理由があるとみられます。
多くの動物において、体脂肪のある程度の割合が「捕食した餌から得た脂肪」に由来するものとなっています。当然、魚を食べた動物の脂肪の一部は魚の脂肪に由来するのですが、魚の脂肪にはDHA、EPAといった魚油が含まれており、これらには強い魚の風味があります。
日本人の多くは「魚から魚の匂いがする」ことは好ましいと考えますが「動物の肉から魚の匂いがする」とちょっと不快に感じてしまうようです。そのために「魚食性の鳥類、哺乳類」はそうでないものと比べて利用されにくい状態が続いているのではないかと思われます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>