光るイソギンチャク『オオカワリギンチャク』 水族館の飼育担当者に生態を聞いてみた

光るイソギンチャク『オオカワリギンチャク』 水族館の飼育担当者に生態を聞いてみた

ガイドに「イソギンチャクの群生地を見に行きましょう」と言われた時、筆者は興味がありませんでしたが、「光り、3分間しか見られない」と聞いて興味が急に湧きました。今回は、オオカワリギンチャクの未知の魅力について、水族館の飼育員のインタビューも交えてご紹介します。

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(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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水族館の飼育員さんに聞いてみた

みなべ町のオオカワリギンチャクの群生地が元の姿に戻るのか、みなさんも気になりますよね。

同じ和歌山県内にオオカワリギンチャクを展示している水族館があります。みなべ町から車で国道と県道を通った約30分の距離の白浜町にある「京都大学白浜水族館」です。

こちらの水族館では、多くのオオカワリギンチャクを展示しています。

光るイソギンチャク『オオカワリギンチャク』 水族館の飼育担当者に生態を聞いてみたオオカワリギンチャク(提供:京都大学白浜水族館より提供)

担当飼育員さんならオオカワリギンチャクについて何か知っているかもしれないと思い、お話をお伺いすることができました。

展示の個体は繁殖したものか?

──みなべで保護をされている一方で、京都大学白浜水族館で展示されているオオカワリギンチャクの個体数は数十個体。これは繁殖をして増えた個体なのでしょうか。

担当飼育員Aさん「水槽内で繁殖したことは、今のところありません。なお、当館ではイセエビの刺し網に偶然かかった個体を入手しており、年に数個体の補充があります。オオカワリギンチャクは比較的丈夫なため、少しの補充で展示には充分であるため、当館では特に繁殖の必要がなく、それゆえに繁殖についての知見はほとんどありません」

展示個体数が多い理由は、イセエビ漁の網にかかったオオカワリギンチャクを補充しているためということでした。

展示で気を付けていることは?

──少なくとも、オオカワリギンチャクは展示スペースでは元気に生き続けているということになります。餌は何を与えているのでしょうか。

担当飼育員Aさん「当館では数十個体のオオカワリギンチャクをまとめて飼育しています。餌をまとめて与える必要があるため、魚類養殖用の配合飼料とアミエビ・オキアミを混ぜて、ミキサーでペースト状にした餌を溶かして与えています」

──展示で気を付けていることはありますか。

担当飼育員Aさん「展示では温度管理に気を付けています。当館では海水を冷却し、通年15℃の水温で飼育しています。深い水深に生息する生き物ですので、高温に弱いです。昔、まだ冷却装置が導入される前は、夏になると弱って死んでいたという記録が残っています。先ほどの繁殖の話に繋がるのですが、たいていの生き物は水温変化によって季節の変化を感じ取ります。そして特定の時期に繁殖するのですが、当館では通年で水温を変化させていません。故にオオカワリギンチャクは繁殖をしないのかもしれません」

冷却装置などの設備が充実しているのも水族館の強みですよね。オオカワリギンチャクも温度の変化を感じれば繁殖をするのでしょうか。気になりますね。

みなべの群生地は再生するのか?

──自分で潜って見た光景と過去の光景のギャップに悲しい気持ちになった群生地。またみなべのオオカワリギンチャクは群生地を作ってくれるでしょうか。

担当飼育員Aさん「15年ほど前から個体数の減少が問題となりましたが、その後保護活動が進んだため、現在は小型の個体が多数確認できるそうです。一応、イソギンチャクの種類によっては自分で分裂するものもあるのですが、展示水槽内で飼育している限りは、オオカワリギンチャク自らでの分裂は確認しておりません。今回みなべでは、小型の個体が増えたということですので、繁殖したのではないかと思います。成長が遅いので時間はかかると思いますが、以前のように立派な光景が見られるようになるとよいですね」

現在は小型の個体が多数確認できるようになったとは嬉しい情報です。

飼育している方へ

最後に、オオカワリギンチャクを飼育をしている方へメッセージをいただきました。

担当飼育員Aさん「インターネット等でも販売されていますが、そこでも注意書きがあるように、高温に弱い生き物です。飼育する場合はきちんとした設備を用意し、責任をもって飼育するようにしてください」

お忙しい中、丁寧にご対応いただきありがとうございました。このまま保護し続ければ、またオオカワリギンチャクの群生地が再生するかもしれないという希望の光が見えました。

京都大学白浜水族館に行ってみよう

希少で神秘的なオオカワリギンチャクについて、水族館の飼育員さんの話も交えて紹介してきました。

京都大学白浜水族館でなら一般の方も目にするチャンスがあります。この記事を読まれた方はぜひ京都大学白浜水族館さんへ足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

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<keiko/サカナトライター>