今年はサンマが大豊漁!? 各地で景気の良いニュースが飛び交いますが、実際はそんな明るい話では無いようで……。
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今年はサンマが安い?
先日、北海道に取材に行っていたのですが、仕事のためにスーパーの鮮魚コーナーを覗いてみると「今朝穫れ根室産サンマ 150円」というPOPが目につきました。根室は日本で最もサンマの水揚げが多い都市として知られています。
自分の記憶では昨年は1匹298円ほどしていたので、およそ半額です。はしりの時期としては平年並みといえるかもしれません。
その後、8月24日には本州で最もサンマの水揚げが多い岩手県大船渡市でもサンマ漁が解禁され、順調な出だしとなったという報道がありました。初競りにおけるキロあたりの単価は1000~1500円ほどとなったそうで、これは去年の6割ほどの価格だそうです。
昨年の「140倍の水揚げ」というニュースも
実際のところ、各地のサンマは「現時点では」豊漁と呼ぶべきデータが出ています。
根室での解禁初日の水揚げは67tであり、これは昨年の140倍となります。また大船渡の初日の水揚げは33tで、こちらは昨年の9倍強という数字です。
宮城県女川では昨年は9月末までサンマの水揚げがありませんでしたが、今年は8月23日に初水揚げがあり、41tが水揚げされたそうです。
実際は状況は悪いまま
これらのデータを見る限り、サンマ資源は復活、あるいは回復傾向にあるようにも思えます。しかし実際のところはまさに真逆と呼べる状態です。
専門機関の発表によると、日本近海へのサンマの来遊量は昨年と同レベルの低水準で、平均サイズは小型化したと言われた昨年をも下回る予測だそうです。国際的にも資源量減少が問題視されており、漁獲量の上限を定めて回復を目指す取り組みも行われていますが、結果にはつながっていません。
昨年のサンマ漁は過去にないレベルの大不漁でした。例年、サンマは小型船による漁が先行して始まり、その後大型船による漁が始まるのですが、昨年の不漁を踏まえて今季は船の大小を問わず「一斉解禁」となったのです。そのため「初日の昨対比」としては大幅な増加に見えるものの、あくまで見た目上のものに過ぎないのです。
このようなゴマカシの数字を持て囃している余裕は現状全くなく、国民全体でサンマ資源の現状を受け止め、将来のための施策を考えていかないといけない状況だと言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>