全身が赤いブツブツに覆われた異様なタコ「サメハダテナガダコ」。毒を持つとも言われていますが、食べることはできるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
謎の南方タコ「サメハダテナガダコ」
先日、スーパーマーケットの鮮魚コーナーで、ちょっと気になる存在を見つけました。その存在とはとある変なタコ。
そのタコは「ミズダコ」という名前で売られていたのですが、北日本で水揚げされる世界最大のタコであるミズダコとは大きさや雰囲気がかなり違っています。
ミズダコは頭部が大きく、足が太くて短いのですが、そのタコは頭部が小さい一方で足は極めて細長く、体の殆どを足が占めているような見た目です。また全身に謎の斑点があり、あまり美味しそうには見えません。
毒々しい見た目の「毒タコ」
とりあえず購入し、持ち帰って確認したところ、これは南方系のタコである「サメハダテナガダコ」であることが分かりました。
サメハダテナガダコはテナガダコと呼ばれるグループのタコの一種で、足の長さが40cm以上にもなるという変わった種です。テナガダコは西日本を中心にまとまった水揚げがあり、安価なタコとして人気の食用種なのですが、サメハダテナガダコは食用として流通することはかなり稀です。
その理由として考えられるのは、見た目が非常に毒々しいこと、そして実際に毒も持っていることだと思われます。生きているときは赤っぽい地に水色の斑点がびっしり入り、とても美味しそうには見えません。またこのタコは口に毒を持ち、噛まれると痙攣などの症状を引き起こした例があるそうです。
食べられるの?どんな味?
そんな毒タコであるサメハダテナガダコですが、食べるうえではその毒は問題とはなりません。有名な毒タコであるヒョウモンダコの毒は、フグ毒として知られるテトロドトキシンのため口にすることができないのですが、サメハダテナガダコの毒は加熱すると無毒化するのです。
そういうわけで、今回このサメハダテナガダコは一旦しっかりと茹で、さらに唐揚げや酢の物に加工してから食べてみました。茹でると普通のタコと同じように足がくるんと丸まり、タコらしい見た目になります。
食べてみると、マダコと比べて身に水分が多く、柔らかさを感じます。これは味が薄いと言える一方で、噛み切りやすく食べやすいという利点にも繋がります。とくに柔らかい胴体の身はサクサクしており、きゅうりの酢の物との相性は抜群。足もたこ焼きの具に最適の硬さで、とても気に入りました。
マダコと比べるとやや安いこともあり、今後も見かけたら購入することになろうかと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>