キスと名がつくけどキスとは別種の『トラギス』 無毒だけどトゲには要注意?

キスと名がつくけどキスとは別種の『トラギス』 無毒だけどトゲには要注意?

キスと名がつくけど、キスではない『トラギス』の生態について調べてみました。

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その他 サカナ研究所

トラギスとは

サカナ釣りの外道でよく知られる「トラギス」。キスと名前についてはいますが、実際はシロギスとは全く異なります。

また、名前も本当はトラギスではなく「キスクラカケトラギス」というのが本当の名前でスズキ目・ワニギス亜目・トラギス科・トラギス属に分類されます。

ちなみにキスで知られるシロギスはスズキ目・スズキ亜目・キス科・キス属に分類されており、見てのとおり別種だということがわかります。

体長は約20cm前後で、体の色は主に褐色をしており、お腹は白いのが特徴です。その境界には黄色い斑点が線上に並ぶとともに、目から体側にかけて黒い帯状班が6か所並んでいます。そして、このうち4つはV字型、尾の付け根上部にくっきりとした黒く丸い斑紋があるのが特徴です。

トラギス自体もたくさん種類がある

トラギスと呼ばれるサカナは実はとても多く、トラギス属に分類されているサカナだけでも、トラギスやオキトラギス、アカトラギス、カモハラトラギス、ユウダチトラギス、マトウトラギス、マダラトラギス、コウライトラギスなどがいます。

キスと名がつくけどキスとは別種の『トラギス』 無毒だけどトゲには要注意?トラギスの仲間(提供:PhotoAC)

トラギスの前に何もつかない真の「トラギス」もいるのですが、クラカケトラギスが一番よく釣れることからトラギスよりもカケトラトラギスがトラギスとして知られています。

生息地と食性

クラカケトラギスの生息域はかなり広く、太平洋西部、日本海、東シナ海の温帯から熱帯海域にかけての沿岸部に分布し、日本では関東以西で生息が確認されています。

沿岸の比較的浅いところからやや深いところの砂泥底を好み、底生の小さな甲殻類や多毛類などを捕食し生息する。

水温が上がる初夏から夏にはかけて沿岸の浅場にも寄ってきくるため、キスの投げ釣りでよく釣れることがあるため、キス釣りの外道として多くの人に知られています。

名前の由来や地方名

カケトラトラギスは漢字では「鞍掛虎鱚」とかなり難しい漢字を使用します。馬の鞍を掛けたような模様のキスという意味に由来しています。

また、トラギスはハゼ類に似ていることから、関西や瀬戸内地方では「トラハゼ」と呼ばれています。しかし、ハゼ類もハゼ亜目ハゼ科であるため、分類上ではキスと同じで全くの別種というのがお分かりいただけます。

地方名としてはゴズ、コズ、ゴジ、イシブエ、オキハゼ、ゴロハチ、トウグロ、ドンコ、ドンポ、などがあり、ドンコに関してはかなりいろいろなサカナと被っている様に思えます。

毒はあるの?

かなり毒々しい色をしていますが、トラギスには毒はなく、どこを触っても問題ありません。

ですが、エラの部分には立派なトゲがあり、毒はないもののこれに刺さるとかなり痛いため、釣りバリを外す時などはうっかりこのトゲに刺さらないよう注意が必要です。

美味しいの?

毒々しい見た目であること、そして基本的に釣りのターゲットでないことからあまり美味しくないと思われがちですが、実はトラギスは上品な白身をした美味しいサカナです。

特別なクセもなく柔らかいので、大きめのものは刺身にして食べることもできますが、大きくても20cm程度なので、捌くのには根気が必要かもしれません。

また、クセが無いというのが旨味に欠けるともとれるため、基本的には小さなものは丸ごと唐揚げにしたり、天ぷらにしたりすることで、ほくほくの身と衣のサクサクが病み付きになること必至。

よく食べられているサカナではないため旬はあまり知られていませんが、産地や種類にもよりますが、旬は産卵期に伴う夏と冬の2回あると言われています。

食べる気になったらぜひ

基本的にはキス釣りの外道である為、美味しいキスを前にわざわざ食べる必要はないかもしれません。

ですが、決して不味いわけではないため、いったいどんな味なんだろうと興味本位で食べてみるのは面白いかもしれません。

この夏、もし出会えたらぜひ挑戦してみてくださいね。

<近藤 俊/サカナ研究所>