陸地に挟まれた水路状の海「海峡」。ここで獲れる魚介類には美味なものが多く、数多のブランドが存在しています。
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「関もの」魚のフェアが開催中
瀬戸内海(豊前海)と外洋をつなぐ豊予海峡。この海の大分側にある「佐賀関漁港」で水揚げされるブランド魚「関サバ・関ブリ」のフェアが、佐賀関を擁する大分市で先日より開催されています。
このフェアは、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店や生産者を支援することを目的に、大分商工会議所によって企画されました。フェア期間中は、高級ブランド魚として全国的に知られる「関もの」の魚が、市内の飲食店で安価に食べることができます。
フェアに先立って開催された試食会では、大分商工会議所が握り寿司400皿を提供し好評だったそうです。
「佐賀関」の魚が美味しい理由
佐賀関で水揚げされる「関もの」の魚では、上記の関サバ、関ブリの他に関アジも全国的知名度を誇っています。しかしなぜ「関」で水揚げされる魚は高級魚とされるのでしょうか。
その要因として挙げられるのが、漁場を流れる「速い潮流」。大分県の関崎と愛媛県の佐田岬の間にある豊予海峡は幅が狭く、干満の差によって発生する潮流は全国でも屈指の速さとなることが知られています。この速い潮の中で成長した魚は身が締まり味が濃くなるのです。
また、潮流によって運ばれてきた栄養塩のおかげで、豊予海峡の海中にはプランクトンが大量に発生しており、それを食べる小動物を含めた「魚たちの餌」が豊富に存在しています。結果として豊予海峡の魚たちは「たくさん食べてよく泳ぎ健康的に肥えた」素晴らしい魚となるのです。
全国にある「海峡もの」ブランド魚たち
上記のような理由から、豊予海峡にかぎらず、速い潮流が通す「海峡」では美味しい魚が獲れ、それがブランドになっていることも多いです。
特に知られるのが、明石海峡周辺で獲れる「明石鯛」でしょう。瀬戸内海と大阪湾を結ぶ明石海峡では、潮流はときに川の流れのような激流となり、それ故に「鯛の骨が疲労骨折し瘤ができる」と言われています。このような環境で育つ明石鯛は、江戸時代からすでにブランド鯛として知られてきました。
首都圏でも、東京湾の富津岬と剱埼の間で漁獲される「走水の金アジ」「松輪サバ」がよく知られています。いずれも漁期には東京湾の漁船が集まり、豊洲では地元ブランド魚として高値で流通します。
北海道と本州の間を流れる、日本でいちばん有名な海峡である津軽海峡でも「津軽海峡メバル」「海峡根ボッケ」などのブランド魚が知られています。
なお、ブランドと呼ばれるほどではなくても「〇〇は潮が速いから魚がうまい」と言われるような場所は全国各地にあまた存在します。そのような場所で、自分だけの「海峡ブランド魚」を見つけるのも楽しいものです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>