ウナギと名がついているのにウナギではない「デンキウナギ」について調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
デンキウナギとは
デンキウナギは、「デンキウナギ目・ギュムノートゥス科・デンキウナギ属」に分類される硬骨魚類のサカナです。
南アメリカのアマゾン川・オリノコ川両水系に分布する大型魚で、強力な電気を起こすため、危険なサカナとして広く知られています。
デンキウナギは全長は約2.5mほどになり、208種いるデンキウナギ目のサカナの中で大きさが最大です。デンキを起こすサカナとして知られてはいますが、どんな生活史で、どのように発電するかなどあまり知られていない部分も多いサカナだと思います。
ウナギだけどウナギではない
和名に「ウナギ」と入ってはいますが、シルエットは細長い円筒形で似ているものの、ウナギとは体の構造や生活史が全く異なり、完全に別の種類に分類されています。
大型個体は丸太のような体形で、頭部は上下に、尾部は左右に平たくなっています。全身はほぼ灰褐色で白っぽいまだら模様があり、尾に行くにしたがって斑点が小さくっています。
眼は小さく退化していますが、そのぶん側線が発達しており、これで水流を感じ取って周囲の様子を探っていると考えられています。
エラはあるのにエラ呼吸できない
一般的なサカナは、肛門は尻ビレの付近にありますが、デンキウナギの場合は肛門は鰓蓋(えらぶた)の直下にあり、他の魚よりもかなり前方に偏っています。
また、ヒレは胸ビレと尻ビレしかなく、長く発達した尻ビレを波打たせて泳ぎます。ヒレを器用に動かすことで前だけでなく後ろにも泳ぐことができます。
デンキウナギの形態的なもう一つの特徴として、鰓(えら)はあるものの鰓呼吸はできず、定期的に水面に顔を出して酸素を補給している点が挙げられます。
このためデンキウナギは水が無くても数日~数週間は地上でも生きていけると言われています。
ヒトを殺してしまうほどの電圧
デンキウナギと言えば、やはり名前にもある「デンキ」の部分が気になります。デンキウナギのもつ発電器官はデンキウナギ目の魚類の中でもとりわけ大きく、その電圧はなんと600ボルトにも及ぶと言われています。
600ボルトがどれほどのものなのかわからないという人も多いと思うので、身近な電気についてお話しすると、電流には直流と交流というものが存在しますが、そのあたりはあまり考えず、電柱の電線などに流れる電流は高圧電流と言い「交流6600ボルト」家のコンセントに流れる電流は低圧の「交流100ボルト~200ボルト」となっています。
これからも分かる通り、デンキウナギの出す電圧は家のコンセント以上にもなるのです。
ちなみに私たち人間は100ボルトの電圧でも感電死することがあるため、デンキウナギは非常に危険なサカナだということが分かりますね。
また、デンキウナギは常に体から微弱の電気を放電しており、この電気をセンサーのようにして活用することで周囲の動きを感じています。そして近くにサカナが通るのを感じると高圧の電気を放電し、麻痺させて捕食するのです。
どうやって発電する?
ではこの電気はいったいどこで生まれるのでしょうか。
デンキウナギの発電器官は、筋肉の細胞そのものが発電板という細胞に変化して電気を起こしています。
この発電器官はデンキウナギの体長のおおそ4/5ほどにも渡っており、鰓蓋下の肛門から最後尾に至るまでほとんどが発電器官で構成されているため、まさに全身発電器官ともいえるでしょう。
興奮したり、外敵に襲われたときにこの発電版の細胞膜が性質が変化し一気に放電をすることが出来るのです。
ウナギほど美味しくはないらしい
デンキウナギでもうひとつ気になるのが、美味しいかどうかということ。デンキウナギは普通のウナギに比べ脂身が多く、ぶよぶよした食感だと言われています。
しかし予想外に旨味はあり、現地でも近年ではそれなりに食用にされていると言われています。
日本で食べる機会はおそらく万に一つもないとは思いますが、南米を訪れた際にはぜひチャレンジしてみて下さい。
ビビビッと感じるものがあるかもしれません。
<近藤 俊/サカナ研究所>