日本人なら誰もが知るサカナながら、生きているところを見たことがある人は意外と少ない「サケ」。しかし、北日本でなくても意外に身近なところにいることがあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
札幌市のど真ん中にサケが遡上
200万人弱の人口を抱える北海道最大の都市・札幌市。そのど真ん中を流れる創成川で先月23日、天然のサケ数匹が泳いでいるのが見つかり、通行人らを驚かせました。
創成川は、さっぽろテレビ塔や札幌駅などのランドマークのすぐ近くを流れる人工河川。サケが遡上する豊平川につながってはいますが、都市河川らしいコンクリ護岸となっている部分も多く、清流というイメージはあまりありません。
見つかったサケの中には婚姻色に染まったものもおり、産卵行動のために入り込んだものとみられています。札幌市豊平川さけ科学館は「都市部の人工河川にサケが遡上するのは珍しい」と話しているとのことです。
知っているけど見たことはないサカナ
日本人でその名を知らないものはまずいないと思われるサケ。川で生まれ、海で4年を過ごし、生まれた川に戻って産卵を行うというその習性も、広く知られています。もちろん食材としても全国で極めて一般的なもの。
一方で首都圏や関西圏に住む人をはじめ、多くの人が「生きて泳いでいるところを見たことがない」魚でもあります。その漁獲が極端に東高西低であるため、東京以南では切り身以外の姿に全くなじみがないのです。
しばしばジョークで「現代の子供たちは魚が切り身の姿で泳いでいると思っている」なんて言われることがありますが、サケの切り身に関してはあり得ない話ではないかもしれません。
意外な場所で見つかったサケたち
そんなわけで、西南日本に住む人の中には「生きたサケは見られない」と思い込んでいる人も多いようです。しかし、実はサケというのは意外なところで見ることができる魚です。
そもそも「北日本の魚」というイメージが強いサケですが、太平洋側の生息(遡上)南限は首都圏の一角・千葉県を流れる栗山川です。ここでは放流事業も行われ、毎年まとまった数のサケが遡上します。日本海側に至ってははるか西、九州は福岡県を流れる遠賀川とされています。
さらに時にはこれよりも西で生きたサケが見つかることもあります。迷いサケといわれるこのような個体は、有名どころでは九州随一の大都市福岡市を流れる室見川でたびたび漁獲されています。
このように、サケは意外と全国で見ることができる魚。しかし、最近は海洋温暖化で分布域が北上しているといわれるのが気になるところでもあります。いつまでも我々日本人にとって「意外に身近な魚」でいてほしいものです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>