鶏肉の「親子丼」のように、魚の身と卵を一緒に調理する料理はいくつかありますが、それぞれちょっとずつ「組み合わせ方」に違いがあります。
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「はらこ飯の日」
東北地方有数の大河「阿武隈川」が町内を流れ、そこでのサケの漁獲が有名な宮城県亘理町。ここで今月8日、藩制時代に地域を治めた伊達成実の霊廟に、サケとイクラを使った地域の郷土料理「はらこ飯」を献上するという催しが行われました。
町では2019年度に「はらこ飯推進条例」を制定、地域の重要な食文化として伝統を守っていくための活動を行っています。それにあたり「阿武隈川のサケ漁が10月に解禁され、8がイクラを二つ並べた形に似ている」ことを理由に、10月8日を「はらこ飯の日」として記念日に指定しました。
この「はらこ飯の日」に合わせ、2020年度から毎年、上記の通り霊廟に献上しているのだそうです。
はらこ飯ってどんな料理?
はらこ飯は、1匹のサケの身と筋子を用いて作る、炊き込みご飯の一種。
味をつけたサケの身をご飯に炊き込み、ほぐして醤油漬けにした筋子(イクラ)を上からドカッと盛り付けるという大変贅沢な料理ですが、当地では漁のシーズンになるとサケも筋子も安く手に入るため、家庭料理の一つとして作られてきました。
いわば「サケの親子丼」と呼べるものかもしれません。
魚の「親子」の組み合わせ三者三様
さて、このはらこ飯と同じように「魚の身と卵」を組み合わせた料理は色々あります。その代表的なもののひとつが「いわし明太」です。
これは福岡の郷土料理で、当地の名産である辛子明太子を、頭と内臓を取ったイワシに詰めるというもの。タラの子である明太子を、タラに捕食されることもあるイワシのお腹に詰めるという点では実にユニークであり、かつ若干サイコ味がある料理といえます。
さらにユニークなのが「子持ちニシン」。これはニシンのお腹に、ニシンの子である数の子が入っている干物で、普通に考えれば「ちょっと贅沢なだけの丸干し」のようにも思えます。
しかし、子持ちニシンの中でも高級品である「索餌ニシンの子持ちニシン」になるとちょっと話が違います。これは身の方には「脂がよく乗るロシア産のニシン」を用い、そのお腹に「高品質で知られるアメリカ産の数の子」を入れているという代物。
つまり「とあるニシンのお腹に、別のニシンの子を詰めている」わけで、考えようによってはかなりサイコです。ちなみに筆者は一度食べたことがありますが、まさに贅沢を極めたような味がして非常に美味しかったです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>