30年ぶりに商業捕鯨が再開されて以来、4回目となる捕鯨シーズンが始まりました。現状はどのようになっているのでしょうか。
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捕鯨と鯨食文化の復活に立ちはだかる壁
しかし実は、商業捕鯨の再開後、上記の捕獲量上限まで漁獲できたことはまだ一度もありません。
1988年の南氷洋商業捕鯨中止から2019年の再開まで30年以上のブランクが有ること、調査捕鯨だけでは保つことができなかったノウハウもあり、またクジラの回遊ルートなどにも変化があることなどから、かつての漁獲水準まで戻すのにはしばらく時間がかかるとみられています。
また反捕鯨国の鯨肉に対するネガティブキャンペーン、国際的環境保護団体からの小売店への圧力もあり、鯨肉の販路もなかなか広がらないのが現状のようです。30年にわたり鯨肉が高級食材となってしまったことから、食材として馴染みのある世代が少なくなっていることも鯨肉市場拡大への逆風となっています。
一方、かつてよりも冷蔵技術が上がり、また南氷洋ではなく沿岸捕鯨が行われていることから、現在流通している鯨肉は昔と比べて高い品質が保たれています。
先月水揚げされたニタリクジラは、クジラを好む大阪やかつての捕鯨の中心地が近い仙台などの市場に出回り、その品質の良さに仲卸から驚きの声が出るほどだったそうです。
筆者も3年前、一度も冷凍されていない沿岸捕鯨のミンククジラを初めて食べ、その旨さに感嘆したのを覚えています。かつての「やすかろうまずかろう」という鯨肉のイメージを持っている人もまだ多いと思いますが、ぜひ今一度、先入観なく口にしてもらいたいと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>