バラエティ豊かなデザイン性を持つイカ。その中でも特にかわいいシルエットをしている「ミミイカ」というイカが今の時期に旬を迎えます。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
耳の生えたイカ
梅雨に入るこの時期に釣りなどで海辺を歩いていると、浅い砂浜やそこに隣接する港湾などで、ふわふわ浮遊する小型のイカを見かけることがあります。
そのイカの名前は「ミミイカ」。特徴的な名前の由来はその見た目から取られています。
スルメイカやヤリイカのようなツンツンした形状とは真逆の、緩やかな丸みを帯びた胴。そしてその横側についているヒレ(エンペラ)もまた、多くのイカのそれのような三角形ではなく、きれいな丸形をしており、まるで世界的なあのキャラクターの耳を彷彿とさせます。
ミミイカとはどんなイカか
ミミイカは「ダンゴイカ」というグループに含まれる種。小型のイカで、成体になっても外套長が4cm程度ほどにしかなりません。
波の弱い内湾に多く、浅い砂泥底を好み、小さなエビなどを捕獲して食べています。
危険を感じると砂に潜って隠れようとするのですが、その際に足を用いて自分の体に砂をかける様子が非常にラブリーで、SNSなどでたびたびそのシーンの動画がバズっているのを見ます。
初夏が旬の庶民的なイカ
そんな可愛らしいミミイカですが、水産物としてみると、瀬戸内海などでまとまった漁獲があります。春から初夏にかけて旬を迎え、安価な値段でスーパーの店頭にも並びます。
サイズこそ小さいですがその分まるごと食べることができ、身が柔らかく、また肝も旨味が感じられます。塩ゆでや薄味の煮付けで美味しく、鮮度が良ければ刺身にもできます。
瀬戸内海に浮かぶ坊勢島という島では、このミミイカをまるごと用いて作る塩辛が特産品となっています。発酵臭が強く食べる人を選ぶといいますが、濃厚な旨味に虜になる人も多いそうです。
ミミイカそのものは関東以北にも棲息していますが、鮮魚として顔を見かけることはほぼない「西日本の味」です。その美味しさを知る身としては、出先で見かけたらつい購入してしまうイカなのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>