牛や馬などの皮を加工した革製品は長い歴史と需要がありますが、近年にわかに「魚の革製品(フィッシュレザー)」に注目が集まっています。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
魚の皮「フィッシュレザー」
寒ブリで有名な漁業の街・富山県氷見市。いま、この街にある「フィッシュレザー」の工房が注目を浴びています。
フィッシュレザーとは、魚の皮を加工して作った革製品のこと。地元の鮮魚店から無料で譲り受けた魚の皮を加工し、財布などの製品にしています。
また高知県でも同様に、フィッシュレザーの生産が行われており、こちらもしばしばニュースになっているようです。
フィッシュレザーの特長は、哺乳類の革製品と比べると薄くて軽く、また鱗や体表の模様などが見た目に個性をもたらすことだと言われています。
世界で注目されている
現在は革製品と言えば哺乳類のものが一般的ですが、かつては魚の皮も革原料としてポピュラーなものでした。我が国でも、北海道のアイヌが鮭の皮をなめし、衣服などに加工していたことは近年よく知られるようになっています。
そして今でも、エイの革の財布や、ヌタウナギという原始的な魚の革で作られたカバンは欧米を中心に人気の高い物となっています。
フィッシュレザーはまた「SDGs」の側面からも注目されています。というのも、魚の皮は多くの場合、利用されずに廃棄されてしまうためです。フランスでは、寿司屋で廃棄される魚の皮を革製品に加工するスタートアップ企業が注目を浴びており、フィッシュレザーの活用は廃棄物の再利用を促進する意味合いもあるのです。
個人でも作れる?
基本的に畜産業者から皮革製造業者へと渡る哺乳類の皮と異なり、魚の皮は誰でも簡単に手に入れることができます。そのため、フィッシュレザーの自作に興味を持つ人もいるかもしれません。
実は筆者も以前、フィッシュレザーの自作に挑戦してみたことがあります。このときは、皮が分厚く丈夫なことで有名な「ウツボ」を釣り、皮を剥がし、濃く煮出した茶のタンニンでなめしを行いました。
このときは、皮に残った脂肪分の除去が甘く、ややベタつきと匂いが残ってしまいましたが、できた革は非常に丈夫で、革製品への加工も問題ないものに仕上がりました。今後はエイやヌタウナギでも挑戦してみたいと思っています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>