他の食材と比べ、とくに歩留まりが悪いと言われる魚介類。廃棄物を減らすための努力が行われていますが、難しいところもあるようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
魚のあらを再利用した「釣り餌」
SDGsについて学ぶ九州大学の学生と九州の企業が、魚のアラや内臓などで作る釣り餌の開発に取り組み、試作品の完成を発表しました。
餌とサイクルを掛け合わせた「エサイクルプロジェクト」の名前で展開されるこのプロジェクトは、海産物加工の過程で廃棄される魚のアラや内臓などを利用したものです。すでに試作品が完成し、先月より佐賀と福岡県内の釣具店などで無料配布を始めています。
この釣り餌は原料を高温で焼成して作られており、鰹節のような匂いで粉状になっています。海水で湿らせるだけですぐに使用でき、釣り餌にありがちな不快な匂いもなく初心者でも使いやすいといいます。
開発に関わった学生は「食料廃棄物の問題が多くの人に伝わるといい」と語っているそうです。(『食料廃棄物を釣りえさへ!ECYCLE PROJECT(エサイクルプロジェクト)始動!』PRTIMES 2022.1.14)
再利用される魚のあら
食料廃棄物や漁業系廃棄物として扱われる魚のあら。一般的に魚介類の可食部分は、重量比で50~70%程度とされており、残りはあらとして排出されるかたちになります。
学術的には「魚類残滓」と呼ばれるこれらの廃棄物は、市場価値がないなどの問題から廃棄される「未利用魚」と合わせ、その再利用が様々な形で検討されています。
現状では、魚類残渣はフィッシュミールとして再利用される事が多いようです。また、家畜の飼料として利用されることもあります。人の利用するものとしては、脂肪に含まれるEPA・DHA、鱗や皮のコラーゲン、甲殻類の殻のキチン質などが抽出され、サプリメントや食品添加物、化粧品などに加工されています。
まだまだ課題も多い
一方で、魚類残渣の再利用には、まだ壁もあります。最も大きな問題は、加工にあたり産地によってあらの「鮮度」が異なることです。
産地で出るあらは新鮮で酸化などの劣化が少なく活用しやすいのですが、流通先のスーパーマーケットなど小売店で発生するあらは鮮度が低く、利用率が下がってしまうのです。かといってあらまで鮮度保持をしようとするとコストが掛かるため、現実的ではありません。
加えて水産物の多くは季節性のものであり、時期によっては加工しようにも適切な原料となるあらが手に入らないことも。さらには加工に当たり、水産物特有の臭いを除去する必要があることも課題となっています。
このようなハードルがあるため、魚類残渣の多くは未だゴミとして廃棄されてしまっており、画期的な解決策が模索されています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>