ヒトだけじゃなくサカナもお酒が好き!?ビールの残りカスで育ったブリに、酒粕で美味しくなるサバ。養殖界で注目される「酒造廃棄物」について紹介します。
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「ほろ酔いサバ」
魚の養殖において「酒造の際に発生する廃棄物」を用いる事例は、実はビールだけではありません。例えば昨年には、山口県の「酒粕で養殖した」養殖サバに注目が集まりました。
このサバの養殖には、酒どころである山口で大量に発生する廃棄物である酒粕を再利用しています。「ほろ酔いサバ」と名付けられたそのサバは、魚の臭みが抑えられ、また旨味も多いという研究結果が出ています。
養殖で活躍する「酒造廃棄物」
魚の養殖においては、一般的にイワシなどの他魚を餌として用います。しかし、例えば植物(牧草)を利用しタンパク質を生産することができる畜産と異なり、タンパク質でタンパク質を再生産する魚の養殖は「効率が悪く、持続的ではない」という批判を受けることも多くなっています。
また、魚の脂は酸化によって質が悪くなりやすく、低品質の飼料で育てた養殖魚は脂の臭みが強く美味しくないという評価をうけがちです。
酒造廃棄物は植物性ながら、タンパク質やアミノ酸を豊富に含み、さらに脂肪の臭みや生臭さを低減する成分を含んでいるものもあります。そのため養殖魚のデメリットを軽減でき、SDGsにも貢献できる飼料として、今後もより注目されていくものと思われます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>