北海道の東岸で発生し、大きな被害を出している赤潮。過去に例のないものとなっているこの赤潮、実は過去に国内で見つかったことのないプランクトンが原因となっているものだったことがわかりました。
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北海道の赤潮被害
北海道東部の太平洋沿岸で9月下旬以降発生が続いている赤潮により、名産品であるウニやサケが死滅する漁業被害が発生しており、拡大の一途をたどっています。
この赤潮は釧路市の漁港で9月20日に初めて確認され、その後は道東の根室~日高地方の太平洋岸16市町に拡大しています。これらの漁獲物は現在獲れていないというだけでなく、赤潮が収まっていないために稚ウニの放流事業も行えていないことから、来年以降も大きな影響が出るのは確実な状況です。
現在の試算によれば、被害総額は最終的に170億円規模になる可能性もあるといいます。国は約21億円の緊急支援を検討し、対策を講じる予定です。(『北海道で赤潮被害拡大80億円 原因は国内初「低水温でも増殖」プランクトン』産経新聞 2021.11.22)
「国内新発見」のプランクトン
北海道沿岸では、これまでにここまで大規模な赤潮が発生したことはありませんでした。そのためいろいろな方向から研究や調査が行わたのですが、10月に行われた調査で、原因プランクトンが国内初発見の「カレニア・セリフォルミス」という種であることが判明しました。
このプランクトンは本来はロシア沿岸などより寒いところに生息しているもので、北大の研究チームは今回のものもロシア方面から流されてきた可能性を指摘しています。
このほか、猛暑による北海道周辺の海水温の上昇や、競合関係にある別の植物プランクトンが少なかったために増殖したことも疑われていますが、ここまで大規模なものになった理由ははっきりとはわかっていません。
被害が長引いているわけ
我が国における赤潮の発生は、瀬戸内海や九州など温暖な地域の浅海沿岸で起こることが多いです。そのため今回の北海道における赤潮発生は、当初は海洋温暖化の影響があるものと考えられており、水温の下がる10月には赤潮被害が収まるだろうと見られていました。
しかし「カレニア・セリフォルミス」は北方系のプランクトンで、なんと約10℃の低水温でも活動が可能な種類なのだそうです。そのため、水温が9度以下にまで下がるまでは赤潮の発生が続くと見られており、12月まで被害が拡大し続ける可能性もあります。
北海道のウニ、サケ漁は近年、温暖化や海洋熱波の影響で不漁が続いており、今回の赤潮はそこに追い打ちをかける形となりました。国や道などの自治体が主体となり、可能な限り大規模の支援や補償を行わないと、今後の漁が立ちゆかなくなってしまう可能性もあるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>