今年の夏に人々の耳目を集めた小笠原諸島での噴火。これにより生み出された「軽石」がいま、日本各地の浜に押し寄せ問題となっています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
沖縄で深刻な「軽石」問題
小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が今年の8月に噴火したことについては、ご存じの方も多いと思います。100年に1度と言われる規模で、一時は新しい島が生成され「日本の領海が広がるかも?」と話題になりました。
しかし残念ながらその島は軽石などの水に浮く軽い成分で形成されていたため、波や海流に洗われて流出してしまい、今後島としては消滅すると見られています。
しかし今、その流出した島の一部が沖縄県内の各地に大量に漂着し始めています。漂着した軽石はかなりの量となっており、沖縄本島北部にある国頭村の浜では1tトラック40杯分の軽石が除去されたものの、これでも焼け石に水の状態だといいます。
様々な場面で被害が発生中
この漂着した軽石は、様々な方面に負の影響を及ぼしています。
例えば上記国頭村の漁港では、軽石の影響で港内で養殖していたサバの仲間「グルクマ」150匹以上が突然死してしまいました。彼らは餌と間違えて軽石を食べてしまったと見られており、解剖すると胃袋にはたくさんの軽石が詰まっていたそうです。これにより国頭漁協では、軽石を摂取した恐れのある約300匹のグルクマを出荷停止にし、約45万円の損害が出ています。
また微細な軽石が漁船の設備に詰まってしまう恐れがあることから漁船も動かせず、エンジントラブルを恐れて出漁できない状態が続いています。11月頭の時点では沖縄県内全域の漁船の3割強が出漁を自粛しているといい、経済的な被害が大きくなっています。
そのほか、ビーチが軽石で埋め尽くされ立ち入りができなくなるなど、観光上の被害も出ています。福徳岡ノ場は35年前にも噴火しているのですが、その際とは桁違いの被害が出る可能性が指摘されています。
軽石の影響は今後1~2年続く可能性があり、サンゴ礁が死ぬなど環境への被害も懸念されています。
今後は本州にも被害が?
10月末には、鹿児島県種子島の沖合にも軽石が到達しました。流出後、一旦は西に向かって流れた軽石ですが、今後は黒潮の流れに乗って北上すると見られています。
シミュレーションによれば、今月末には関東地方の沖合にも軽石が到達する恐れがあるといいます。これによる被害は漁業に限らず、もし仮に、軽石が大都市部の工業地帯に押し寄せれば、工業用の取水や発電所の冷却水などに軽石が混入することでトラブルが発生する恐れもあります。
自然が生み出した「水に浮く脅威」の今後の動き方に、注目が集まっています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>