ニジマスは聞いたことがあっても「チャマス」は知らないという人は多いかもしれません。じつは今、この魚が増えて問題になっている地域があります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
秋田でブラウントラウト駆除を実施
秋田県南部の中心都市で、秋田県一の大河・雄物川の流域にある横手市。ここでは今、ブラウントラウトという外来魚の駆除作業が行われています。
雄物川の最大支流で、横手市内を流れる横手川やその支流では、数年前よりブラウントラウトが大量に繁殖し、問題となっています。県と地元の漁協では、2017年から毎年、調査を兼ねた駆除作業を実施しています。
横手川支流の武道川では現在、捕れる魚の9割以上をブラウントラウトが占めることもあるといいます。地元漁協の副組合長は「在来種はほとんどいない状態」と語っているそうです。県は、これからも定期的な駆除を実施するとともに、川に持ち込まないよう呼びかけています。(『外来魚「ブラウントラウト」大量繁殖で』日テレNEWS24 2021.10.19)
ブラウントラウトってどんな魚?
ブラウントラウトは「茶鱒」とも呼ばれ、大きいもので1mにもなるサケ科の大型種です。アジアとヨーロッパの広い範囲に生息しているほか、北アメリカや日本など世界中に移植されています。
本来は他のサケ目の魚と同様に河川で育ち海に降る生態を持っていますが、ブラウントラウトはヤマメやイワナと同様に陸封型と降海型があり、狭義のブラントラウトは陸封型の個体を指します。
ブラウントラウトは水温の低い溶存酸素量の多い水域を好むが、他のマス類よりは比較的高温にも耐えるとされています。日本へは19世紀末に、他の外来種の卵に混じって移入したと見られていいますが、その後は主に遊漁目的で人為的に放流され、各地に生息域を広げました。
ブラウントラウトが引き起こす問題
ブラウントラウトはきれいな体色や針にかかったときの強いファイトから釣り人に人気がある魚ですが、その一方で繁殖力が高く、強い魚食性を持つことから、生息する水域で在来種を駆逐するケースが世界中で後を絶ちません。
彼らはとくに他のサケやマスの卵や稚魚を活発に捕食することが知られており、北海道では水産資源として有益なサクラマスの稚魚がブラウントラウトにより減少している例も報告されています。
またそれだけでなく、イワナなど遺伝子的に近い在来種との交雑も報告されており、遺伝子汚染という問題も引き起こしています。これらの理由から、ブラウントラウトは水産庁が指定する「適切な管理が必要な外来種」のひとつに指定され、生息域の拡大を防ぐよう呼びかけられているのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>