東京湾で『青潮』が発生 混同しがちな「赤潮」とは全く異なる存在?

東京湾で『青潮』が発生 混同しがちな「赤潮」とは全く異なる存在?

赤潮と比べるとあまり耳馴染みのない「青潮」。どちらもプランクトンによって引き起こされる海の異常ですが、そのメカニズムは大きく異なります。

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千葉で「青潮」が発生

今月3日頃より、東京湾に面した千葉県船橋市から千葉市の沿岸部にかけて、海の色が青白くなる「青潮」が発生しニュースになっています。

青潮は千葉県沿岸では毎年数回観測されており、今や珍しい現象ではなくなっています。春から秋までの間、とくに初夏や初秋などに多く、気温が高い・北寄りの風が吹くなどの条件がそろうと発生しやすいようです。

東京湾で『青潮』が発生 混同しがちな「赤潮」とは全く異なる存在?青潮(提供:PAKUTASO)

この青潮の発生と前後し、千葉市中央区の県庁前を流れる都川では、水面近くに100匹以上の魚が集まる様子も観測されています。これらの魚は、青潮の発生した水域を嫌い、河川内に逃げ込んだのではないかと考えられています。(『海面が青白く変色…千葉の沿岸部で「青潮」発生』テレ朝NEWS 2021.9.8)

青潮と赤潮は全く違うもの

青潮は簡単に言うと「酸素が少ない海底の水が海面まで湧き上がって起きる」現象です。東京湾のような富栄養化した海域でよく発生するもので、地域によっては「苦潮」と呼ぶこともあります。

青潮が起こると、酸欠になった魚が死んで浮き上がったり、硫黄酸化物が発する還元臭という卵の腐ったような匂いが発生することで周辺住民に被害を与えます。

東京湾で『青潮』が発生 混同しがちな「赤潮」とは全く異なる存在?赤潮(提供:PhotoAC)

青潮は名前の似ている赤潮と混同されますが、これは「大量発生したプランクトンそのものによって海が赤く見える」というものです。これらは名前が似ており、またいずれも海洋生物の死を招くため混同されているが、互いに全く異なる現象です。   

青潮が発生する原理

東京湾のような富栄養化した海域にはもともとプランクトンが大量に生息しているのですが、彼らは死ぬと海底にたまり、バクテリアによって分解されます。大量の死骸が分解される過程でバクテリアが大量の酸素を消費し、その結果海底付近に酸素含有量が非常に少ない海水の塊(貧酸素水塊)が形成されます。

貧酸素水塊の中では嫌気性細菌たちが活発に活動しているのですが、彼らは硫化水素を発生させます。そのため、貧酸素水塊には硫化水素が大量に含まれた状態になります。

東京湾で『青潮』が発生 混同しがちな「赤潮」とは全く異なる存在?東京湾の沖合には大量の窪地がある(提供:PhotoAC)

その状態で陸からの風が吹くと、浅い水域の表層海水が沖に向かって流され、それを埋めるように海底の貧酸素水塊が水面まで上がってきます。このとき、硫化水素が酸素と結びつき、硫黄酸化物の微粒子を形成します。これが太陽光を反射し、青白く見えます。これが青潮と呼ばれる理由です。

仮に海底に窪地があると、その中は海水の滞留が起こりにくくなるため、貧酸素水塊が形成されやすくなります。東京湾にはかつて湾岸の埋め立てに用いるために海底の砂をとったことによってできた穴がいくつもあると言われ、それが青潮の原因になっているという説もあります。海水の富栄養化も含め、青潮は人の経済活動によって起こされた「人災」であるとも言えるかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>